12月 30

 今年は、正月の能登半島の地震に始まり、異常気象に支配された1年でした。夏の暑さも尋常ではなかったですね。

 今年は(特に後半になって)、著名人たちの訃報が相次ぎました。私は今年70歳になったのですが、同じ70代の方々の訃報が気になりました。70代は、死を意識し、死を視野に入れて生きなければならないと思いました。

 今年の仕事の中心は、牧野紀之の『ヘーゲル研究入門』の3つのテキストについて、牧野の設問の解答、それぞれのテキストの解説と、ヘーゲル哲学全体の解説を書き、それを本として刊行することでした。今、その最終段階の校正と、原稿の執筆をしているところです。来年の春までには刊行できると思います。

 来年1月からの中井ゼミの予定と、1月の読書会のテキストが決まりましたから、お知らせします。

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来年1月からのゼミ日程

月の前半は、文章ゼミ+「現実と闘う時間」を行い、
月の後半では、読書会を行う予定です。
いずれも日曜日で、午後2時開始予定です。
オンラインでの実施予定

「現実と闘う時間」は、参加者の現状報告と意見交換を行うものです。

参加希望者は今からスケジュールに入れておいてください。また、早めに申し込みをしてください。
ただし、参加には条件があります。

参加費は1回2000円です。

1月
12日
 26日
2月
  9日
 23日
3月
  9日
 23日

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1月26日の読書会テキストが決まりました。

今度の本の刊行に合わせて、確認しておくべき文書を読みます。

第1に、ヘーゲル『哲学史講義?』(河出文庫)から「懐疑派の哲学」
 中井は大型本の『哲学史講義中巻』(河出書房新社)で読みます。これで40ページ弱です。

第2に、牧野紀之「ヘーゲルの概念とマルクスの賃労働」の第3章「賃労働者の概念的性格」。(『ヘーゲルからレーニンへ』に収録)これは『ヘーゲル研究入門』のテキスト3の問24を検討するためです。このテキストをお持ちでない人にはお送りします。

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  連絡先 
 事務局メールアドレス keimei@zg8.so-net.ne.jp

12月 14

12月21日(土曜日)読書会を開催します
午後2時から2時間ほどオンラインで実施
参加費は2千円です。

テキストはヘーゲル『宗教哲学講義』講談社学術文庫の
  第3部「完成された宗教」439?576ページ

キリスト教のいわゆる三位一体の説明で、
ヘーゲルの発展観の根本が解き明かされます。

参加希望者は以下に申し込みください。

事務局メールアドレス keimei@zg8.so-net.ne.jp

11月 03

鈴木蕗子さんの「赤ちゃんが泣く前」を掲載します。

蕗子さんは中井ゼミで学び合っている仲間の一人です。学び始めて2年がすぎました。
今年の4月から、鶏鳴学園の中学生クラスで講師をしています。

10年以上の看護師として、助産師としての経験を持ち、出産介助の部署にいた3年半ほどで100人以上の出産に立ち会ってきました。
そこで赤ちゃんについて何を見て、何を感じてきたのか。
それを書いてもらいました。

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赤ちゃんが泣く前                
           鈴木蕗子

 助産師として10年以上働いてきた。私が一番好きな赤ちゃんの顔は、生まれる時の顔である。お産介助の部署にいたのは3年半ほどで、そこで100人以上の産婦のお産を介助した。お産の姿勢は、仰向けの他にも横向き、四つん這いもあった。分娩台の上が多かったが、畳みでのお産もあった。

 赤ちゃんを生みだす力は陣痛と呼ばれるが、そのはじまりは、産婦が何かをやり遂げた時や気を緩めた時であることが多い。陣痛には波のリズムがある。赤ちゃんが過ごしている子宮は縮み始め、産婦は痛みを感じる。20秒から30秒ほど、その山を越えると子宮は緩み、次の山まで10分ほど静かな時間ができる。これが繰り返し続く時、お産が始まったと考える。波の山は徐々に大きくなり、赤ちゃんが生まれる時には60秒ほど痛みを感じる。そして、波と波の間は1分、2分までに狭まる。
お産が始まると赤ちゃんはからだの向きを変えていく。産婦が仰向けの時に、私は産婦の左か右の腹辺りで赤ちゃんの背中に触れることができる。だいたいの赤ちゃんは頭から出てくる。頭を下にし、横向きになっている。ところがお産が進むと、産婦の臍辺りで赤ちゃんの背中が触れるようになる。赤ちゃんは小さな手足を産婦の背中側に向け、うつ伏せになったのだ。十月十日近く、呑気にからだを動かしていた時の赤ちゃんはもうそこにいない。赤ちゃんの手足を触って、赤ちゃんとの掛け合いをすることも、もうできない。赤ちゃんは、陣痛の波に合わせて自分のからだ全体をぐーと押し出し、生まれてこようとしているのだ。

 それからしばらくして、産婦の股から赤紫色の頭にぺったりと張り付いた髪の毛をのぞかせる。のぞかせるというのは、陣痛の波の頂点に達している時だけで、波がおさまれば、赤ちゃんはそれまでいたところに戻るということだ。そうして陣痛の波に乗って、髪の毛が見えたり、見えなくなったりが繰り返される。初めてのお産の場合はこの時まで、陣痛が始まってから半日以上、場合によっては何日もかかっていることがある。産婦は汗びっしょり。あともう少しと、私の気持ちは高まっていく。

 破水がまだの時は、髪の毛の上に羊水が入った薄い膜が張ってある。指でこすったくらいでは簡単に破けない頑丈な膜だ。陣痛の力で、赤ちゃんを包んでいた袋が水風船のように膨らむ。それが破けると、羊水の匂いがする。そういえば、学生の時に羊水を顔に浴びたことがある。乳白色のやさしい匂いだった。これが母の匂いであろうか。浴びた時に、この世界の不純物が一切ない澄んだ水だと聞いた。ここで赤ちゃんの湿った髪の毛を触ってみる産婦もいる。そして、陣痛の波がおさまっても、陣痛の波の頂点にいる時と同じところまで赤ちゃんが押し出され、戻らなくなった状態が来たら、もう生まれるのは近い。私は自分の手を赤ちゃんの頭へと、そっと寄せる。手のひらでは納まりきらないほどの大きさの赤ちゃんの頭が、丸いお月様のように見えている。

 いよいよ顔が出てくるという時には、おでこが見え、水面から顔を出すようにして、私の顔と赤ちゃんの顔が向い合わせになる。むぎゅっとつぶった目と口に、赤紫色の浮腫んだ顔が出てくる。頬っぺたに、ぼてっとしたおまんじゅうを二つ入れているかのようである。一生懸命に頑張っている時の顔は、ぶさいくなのかもしれない。全力の顔だ。これから力強く最高の泣きを披露する直前の顔だ。その顔が一番、たまらなく好きだ。

 時折、赤ちゃんの顔が出た後に、陣痛の波が山を越えておさまり、60秒ほどの静寂な時間を過ごすことがある。次で最後の陣痛になるだろうと予想する。その陣痛が来るまでの間、産婦の呼吸の音がゆっくりと静まり、からだの力が抜け、眠っているような時が訪れる。それでも赤ちゃんは、同じ顔のまま、まだ目をつぶっているのだ。なんという時間だろう。初めてこの世界で会う赤ちゃんの顔をしっかりとこの目に焼き付けたいから、私は、産婦の身体に力が入る時期を感じようとしながら、できるだけ赤ちゃんの顔を見ている。というか楽しんで見つめている。はじめて、やっとやっと出てきたのだから。

 陣痛の力でゆっくりと90度回転し、肩が片方ずつ出た後は、産婦が赤ちゃんと向い合せになって抱きかかえられるようにするために、産婦の胸に向って弧を描くように送り届ける。その時、産婦の股を傷つけないよう、赤ちゃんのおしりにもう片方の手を添え、足先までそっと出てくるのを見守っている。

 胸辺りが外に出た時に泣く子もいれば、からだが全て出てから泣く子もいる。大きな泣き声が響き渡る。両足を思い切り振って、全身の力を振り絞って泣くのだ。

 赤ちゃんを見ていると、そうだ、こんな力が私にもあるということを思い出す。赤ちゃんってパワフル。

8月 06

牧野紀之の近況とその仕事の引継ぎ

■ 目次 ■

4 ブログの整理 → 明後日8月6日

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◇◆ 4 ブログの整理 ◆◇

ブログの整理の仕事は東谷が行います。
東谷については、下記のX(旧Twitter)アカウント@higashi_keigo 又は、noteをご覧下さい。
X : https://twitter.com/higashi_keigo
Note : https://note.com/keigo_h_m

東谷は現在、ドイツでキリスト教の歴史研究を行っており、将来的には、牧野さんが2011年以来繰り返し主張してきた「真の民間シンクタンク」(参考記事:「政治家の育成とシンクタンク」https://blog.goo.ne.jp/maxikon2006/d/20190720)の設立・運営に力を尽くしたいと考えています。
当面の仕事の一つとして、このマキペディアにあがっている全1,762件の記事を整理する作業を行っていきます。ブログ「マキペディア」は、牧野さんが2006年に、「ウィキペディア」に触発される形で「自分の辞書」を作っていくことを目的に開設されたようです。また、それは「ヘーゲル哲学辞典を受け継ぐものでもあります」と書かれています(「初めに」https://blog.goo.ne.jp/maxikon2006/e/b060b8a571203a30bbc69a7da7a9c638)。

つまり、『ヘーゲル的社会主義』(1990年初版発行)に収められている「ヘーゲル哲学辞典」をさらに発展させて、日常使われている言葉や観念の概念規定を正確に定め、生活の中で起こっている諸問題を考える手掛かりを与える、という役割を果たしていると思います。10年以上の牧野さんの地道な努力によって、その項目も多岐にわたります。また、辞書的な記事のみならず、ヘーゲル研究の論文や政治行政批判など、現実の問題に取り組むうえで非常に参考になる文章が多く、これを役立てないわけにはいきません。
しかし、現状は決して分かりやすく整理されているとはいえず、必要な時に読みたい記事を取り出すのに手間がかかってしまうので、これをカテゴリー毎に整理して誰でも簡単にアクセスできるようにしようと考えています。詳細については、現在検討中につき、少々お待ちください。牧野が我々に残してくれた「辞書」が一人でも多くの人に役立つことを願っています。
最後に、本ページをご覧になっている方とは、今後もしかすると何かしらのご縁があるかもしれません。牧野やヘーゲル哲学に興味をもったきっかけや問題意識など、是非ご連絡いただければ嬉しく思います。

8月 05

牧野紀之の近況とその仕事の引継ぎ

■ 目次 ■

3 鶏鳴双書、関口ラジオ講座の録音などの注文の受付方法 → 8対5日
(1)鶏鳴出版からの鶏鳴双書の刊行
(2)お申込み方法
(3)注文を受け付ける鶏鳴双書、関口ラジオ講座の録音のリスト

4 このブログの整理 → 8月6日

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◇◆ 3 鶏鳴双書、関口ラジオ講座の録音などの注文の受付方法 ◆◇

(1)鶏鳴出版からの鶏鳴双書の刊行

牧野紀之の独自性の1つは、その初期から中期にかけての自分の全著作を自分自身が作った鶏鳴出版という個人出版社から出版したことだと思います。2001年の『精神現象学』の未知谷からの刊行からは、外部の出版社からの本格的な出版に転じましたが、それまではほとんだが鶏鳴出版からの刊行で「鶏鳴双書」としてその出版番号がつけられ出版されたものです。
そこに初期から中期の大切な著作があるのですけれど、残念ながらそれらは今では絶版、品切れで入手することは困難です。そこで、その対応としては牧野自身がそれらをPDFファイルにし、それを CD – ROM で販売、その後USBメモリーで販売するということを行っていました。
しかし牧野自身がもはやその仕事をすることはできなくなりました。そこでその仕事は、中井が引き継ぐことにいたします。なお、今後はクラウドからダウンロードする方法でお渡しします。

(2)お申込み方法

1)以下の連絡先に注文をしてください。メールで連絡していただけると助かります。
その際、お名前と注文をご記入ください。

〒113?0034
東京都文京区湯島1?3?6 Uビル7F
鶏鳴学園 
メールアドレス keimei@zg8.so-net.ne.jp
ホームページ http://www.keimei-kokugo.net/

2)こちらからの申し込み完了メールが問後来ましたら、以下に代金を振り込みください。

みずほ銀行
吉祥寺支店 246
普通口座 3143148
中井 浩一

3)振り込みを確認させていただき次第、クラウドからダウンロードする方法を、メールで連絡いたします。

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(3)注文を受け付ける鶏鳴双書、関口ラジオ講座の録音のリスト(以下の文書のコメントは牧野によるもの)

【鶏鳴双書】

pdf鶏鳴双書1   2000円

01、小論理学(上巻)
02、同、注解
03、生活のなかの哲学
04、先生を選べ
05、哲学夜話

pdf鶏鳴双書2   2000円

01、小論理学(下巻)
02、同、注解
03、概念論(第1分冊)
04、ヘーゲル研究入門
05、労働と社会
06、ヘーゲルの目的論
07、関口ドイツ語学の研究

pdf鶏鳴双書3   2000円

01、ヘーゲルからレーニンへ
02、ヘーゲルの修業
03、ヘーゲルと共に
04、ヘーゲルと自然生活運動
05、囲炉裏端
06、ヘーゲル的社会主義

pdf鶏鳴双書4  800円
 
「自然哲学(序論)」ヘーゲル著、牧野紀之訳注

 ヘーゲルの「自然哲学」の序論を訳し、細かい註解を施したものです。ヘーゲル読解についても、ドイツ語を文法的に読むという点でも、出来る限りの註解を書いたものです。

 短い場合は除いて、原則として、訳文と訳注とを別のファイルに入れてありますから、訳注を参照しながら読むのに便利に出来ています

 お届けするものは、USB 1ケと訳者の使った原書のコピーです。このコピーで、訳者がどのような印を付けながら本を読んだかが少しは分かると思います。

pdf鶏鳴双書 5、「合本・鶏鳴」第1?12号 3000円

合本・鶏鳴1(1?15号)
合本・鶏鳴2(16?30号)
合本・鶏鳴3(31?45号)
合本・鶏鳴4(46?65号)
合本・鶏鳴5(66?77号)
合本・鶏鳴6(78?89号)
合本・鶏鳴7(90?101号)
合本・鶏鳴8(102?113号)
合本・鶏鳴9(114?125号)
合本・鶏鳴10(126?137号)
合本・鶏鳴11(138?149号)
合本・鶏鳴12(150?170号)

 大した成果を上げられなかったとは言え、70年代の熱を帯びて始まった我々の鶏鳴運動の記録ではあります。今では雑誌『鶏鳴』は、実質的には、ブログ「マキペディア」とその読者に受け継がれていると思います。

pdf鶏鳴双書 6「ヘーゲルの始原論」、定価1000円(税送込み)

01、ヘーゲル「大論理学」冒頭の「始原論」(初版)の注釈付き翻訳
02、同(再版)の注釈付き翻訳
03、マルクス「経済学の方法」(『経済学批判序説』の第3節)の注釈付き翻訳

04、牧野紀之の論文「寺沢恒信氏と哲学」
05、同「山口祐弘訳『始元論』を読んで」
06、同「許萬元のヘーゲル追考論」
  許萬元のヘーゲル研究の中心テーマの1つが追考論です(氏自身は「追考」ではなくnachdenkenとしていますが)。これが始原論と関係があるので、この際、検討してみました。

07、同「ヘーゲルのWissenschaftをどう訳すか」
08、同「寺沢訳『大論理学2』を読んで」
  「大論理学(初版)」の第2巻(本質論)の翻訳を検討しつつ、様々な問題に言及しています。
09、ヘーゲル「大論理学」冒頭の「始原論」のラッソン版のコピー

備考・以上は2009年12月12日に発表し、その後書き加えたりして、改訂したものです。
   最終改訂日は2015年03月08日です。

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【関口ラジオ講座】

01、「関口ラジオ講座1956年度1年分」 2万円。

  1956年04月から翌年03月までの52週間、NHKラジオで月曜から金曜まで毎朝15分間、関口存男(つぎお)氏がドイツ語を熱心に講義したものの録音です。

 テキストは、氏の教科書「標準ドイツ語読本」(全2巻、三修社)をベースにして少し変えたものです。

 応用として高度な文法の説明もあります。

 テキストそのものはありませんが、それに代わるもののコピーと、放送自身の細かいメモがあります。

02、「関口ラジオ講座の要点」 4000円

     内容
 開講の挨拶(1)
   勉強の仕方
 01、暗記の重要性。1957年10月31日
 02、文法の意義。1957年11月28日
   発音
 03、r はなぜ母音化するのか。1957年04月29日
 04、n を日本流に発音してはならない。1958年01月30日
 05、長い母音と短い母音の発音の違い。1957年09月27日。
 06、語頭の母音の発音は英仏とは違う。1957年09月30日
 07、いろいろな音(鐘の音、秒針の音、列車の音)。1956年10月18日
   詩
 08、ゲーテ・Stirb und werde 。鈴木さん出演。1956年08月31日
 09、ゲーテ・Grabschrift(墓碑銘)。1956年09月28日
 10、ブッセ・Ueber den Bergen (山のあなた)。1956年10月31日
 11、ファルケ・Gebet (祈願)。1956年12月31日
 12、ゲーテ・Erinnerung (警告)。1957年01月31日
 13、ハイネ・Du bist wie eine Blume(花のをとめ)。1957年03月28日