4月 11

3月末を以て江口朋子さんがめでたく「修了」しました。

それをきっかけに、ゼミの原則を策定しようとしています。
これは、20代の若い方々に示す、これから10年の目標であり、人生の設計図です。

これらは、これまで江口さんや守谷君たちゼミの若い人たちを指導してきて、実際に問題に直面し、その都度、その問題解決をする中で確認されてきたものばかりです。年期が入っています。私と多くのゼミ生の血と汗と涙と、そして歓喜とでびっしりと裏打ちされています。ゆっくり、しっかり、噛みしめて欲しいと思います。

こうした原則は、文字面は理解できたとしても、すぐに「わかる」ものではありません。しかし、前もってその全体を示しておき、個々の場面で、この原則の意味を繰り返し考えてもらうことが大切だと思っています。

理念とは、そのようにしてしか理解できないし、そのような形でしか役立たないものだと思うからです。
理念はすぐにわかるものではなく、問題をすぐに解決できるものでもありません。しかし、それは、その人の人生の中に繰り返し現れてきます。その都度、その理念に触れることで、少しずつそれが感じられるようになり、その理解が進むのだと思います。そして、理念の理解が進むほど、自分と社会と世界の成り立ち、その問題とその解決の道筋が、シンプルな形ではっきりと見えるようなります。それが理念だからです。

したがって、これらの原則は、守るべき規則といったものではなく、自分の位置を確認する羅針盤のようなものです。そのように受け止め、その意味を繰り返し考えていって欲しいと思います。

■ 目次 ■

中井ゼミの原則 (特に20代の若い方々に)
1 目標 「自立」をめざせ
2 目標達成の方法、大きなプロセス 
3 親から自立せよ
4 「先生を選べ」 
5 「正しい学ぶ姿勢」を確立せよ
6 「民主主義者の原則」
7 立場の問題

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中井ゼミの原則 (特に20代の若い方々に)

1 目標 「自立」をめざせ
(1)「自立」とは何か
主体性の確立(=依存をしない)。
・自分のことは、自分で考え、自分で決め、自分で実行して、自分で責任をとる。
・親や「先生」や世間やマスコミなどに依存をしない。

(2)「自分とは何か」の答えを出せ。
「自分とは何か」の答えは、結局は「自分の人生のテーマ、人生の中心」に他ならない。
その答えは、10代、20代前半では、進路・進学で問われ、先生、友人、恋人などの選んだ人間関係で問われ、仕事のナカミで問われる

(3)目標2つ
?「自分の人生のテーマ、人生の中心」をしっかりと作る
?そのテーマを貫いて生き、テーマを実現するための能力と姿勢を身につける

※世間で良く言われる「テーマ探し」はダメ。探して見つかるような簡単なものではない。
「テーマ作り」「自分作り」という意識で取り組むべき

2 目標達成の方法、大きなプロセス 

(1)「テーマ作り」「自分作り」のための最大の障害が親の影響。
親からの直接的な働き掛けだけではなく、むしろ無自覚な親からの影響こそが、自立を妨げる。
そこで、10代、20代では、親からの自立が大きな課題になっていく。
  → 「親から自立せよ」

(2)自分のテーマ作りを達成できるような先生を選びテーマ作りに励む。その一方で親の価値観を相対化する
    → 「先生を選べ」「正しい学ぶ姿勢を確立せよ」

(3)選んだ先生の元で修業し、その先生の弟子たち(仲間)との研鑽を積み重ねる
→ 「民主主義者の原則」の理解と実行

以下、順にこれらの原則を示し、説明する

3 親から自立せよ

?親の言うことを、ただおとなしく聞く。(=依存そのもの)
?親に反撥、反抗する。(=依存の裏返し)

この?でも?でもダメ。

?両親の階層、価値観、生き方、知識と能力などを、徹底的に相対化、客観化し、自分のどこにどういった両親の影響があるかを自覚せよ

【解説】
本当の自由(自立)は必然性の自覚から生まれる。
自分が今あることの必然性とは、直接的には自分の両親(その出自、階層、価値観、生き方、知識と能力など)にある(間接的には全自然史、世界史、この人間社会にある)。
したがって、両親を客観的に深く理解しない限り、自分のことが理解できず、自立もできない。

人は両親の決定的影響を受けて成長し、無自覚にその影響下にある。表面的には「従順」でも「反抗」していても、同じである。親との一体化は骨の髄まで進んでいる。
できることはそれを自覚し、相対化し、その上で自分自身の生き方を選択すること。

これを押し進めるには「先生を選べ」の過程は不可欠

これは20代で終わらず、一生の課題でもある。
自分自身が結婚する(しないと決める)時に、
また親になって子どもを育てる時に、
自分はどんな原則で生きるのかを問われる。

4 「先生を選べ」 →牧野紀之「先生を選べ」「道場の3原則」を参照
(1)学ぶ目的をはっきりさせろ
(2)その目的にあった先生を選べ
(3)先生から徹底的に学んで、目的を達成せよ

※ 牧野の「道場の3原則」を少し変えてある。学ぶ側の主体性(目的の達成)を強調したことと、「先生に対する批判の禁止」を外し、むしろ積極的に「先生やゼミに問題提起をせよ」(「民主主義者の原則」の(3))とした点が違う。後者は、民主主義と集団的思考を徹底するためだが、「先生に対する批判の禁止」の本来の意図は、「学ぶ姿勢」の原則で「先生への反抗」を禁ずることで達成できると考える。

5 「正しい学ぶ姿勢」を確立せよ →牧野紀之「先生を選べ」を参照
「正しい学ぶ姿勢」、つまり「自分でやって先生の批評を聞く」を守り、実行せよ。
まず自分自身で考え、その考えを文章にしたり、実行して結果を出せ。その上で批評を受けろ。
質問・相談は、まず自分自身で考えをまとめてから、または実行して結果を出し、その意味を考えてからにせよ

※以下はいずれも間違いである。
?先生(親)の言うことを、ただおとなしく聞く。(=依存そのもの)
?先生(親)に不満を言ったり、反抗したりする。(=依存の裏返し)

6 「民主主義者の原則」
(1)自分について
自己反省と自己理解を第一とせよ
・ 他者についてあれこれ言う前に、自分自身を反省せよ
・ 他者を批判するときは、その批判点が自分に当てはまらないかどうか考えよ
・常に「自分とは何か」を第1に考えよ。
(2)他者との関係について
?他者への批判・疑問は、直接本人に言え
?他者からの批判・疑問・意見は、冷静に聴いて、よく考えよ
(3)自分に対して、他者に対して、全体に対して、常に問題提起せよ(「突っ込み」を入れろ)。中井やゼミへの対応も同様で、問題提起を奨励する。
 KYの逆をせよ

※感情的な言動への対応については別にまとめてある

7 1?6の原則に対する態度(立場の問題)
以上の1?6の原則に同意する必要はない。同意や反対をするには、その前にそれを理解することが必要になる。だから、この原則の意味を考えていくことだけが求められる。

1?6の原則の背景には、明確な立場がある。それは「発展の立場」(ヘーゲル哲学)である。このゼミは、この「発展の立場」からすべてのことを考えようとしている。
したがって、この立場の理解のために、前提となるいくつかの学習を求める。
牧野紀之やへーゲルや私の文章である。

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