7月 05

昨年の秋に、マルクスの労働過程論(『資本論』の第3篇第5章第1節)を
丁寧に読んで、労働価値説と唯物史観について考えてみました。

 今回考えたことをまとめ(「マルクスの労働過程論 ノート」)、
その考え方の根拠となる原文の読解とその批判(「マルクス「労働過程」論の訳注」)
を掲載します。

 ■ 全体の目次 ■

 1.マルクスの労働過程論 ノート
  A 全体への批判
  B 構成
  C 本来の構成(代案)

 2.マルクス「労働過程」論(『資本論』第1部第3篇第5章 第一節)の訳注                           
 
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 ■ 本日の目次 ■

  1.マルクスの労働過程論 ノート(その2)   中井 浩一
B マルクスの労働過程論の構成
C 本来の構成(代案)

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B マルクスの労働過程論の構成

(1)資本主義社会の資本家と賃金労働者の関係の話から、
     一般的な労働過程論へ    …1段落

(2)一般的労働過程の内部構造
    [1] 人間と自然の物質代謝が労働  …2段落
    [2] 人間は労働で人間のために自然を変えてきたが、
      同時に人間自身を変えてきた  …2段落
      ・人間はその潜在的能力を労働によって発展(開花)させてきた
    [3] 動物一般や昆虫と人間の労働との違い 思考=目的意識性
       …2段落
    [4] 労働過程の3要素  …3段落
       人間労働(合目的的活動)→直前の[3]にあたる
       労働対象 →次の[5]にあたる
       労働手段 →次の[6]にあたる
    [5] 労働対象  …4段落
    [6] 労働手段  …5段落
    [7] 傍流 空間が前提 …6段落
    [8] 労働過程の結果・成果、それを止揚したのが生産物
        …7段落

(3)生産物の立場からの、労働過程の検討
    [1] 生産物の立場からの労働過程を振り返る 「追考」の宣言
       …8段落
    [2] 過去の生産物から新たな生産物が生まれ、それが次の労働の条件になる
       …9段落
    [3] 人類史からの事実命題 人間は労働の蓄積で、世界を変えてきた
       …10段落
    [4] 大工場内部での労働の蓄積
      ・主原料と補助原料 …11段落
      ・1つの生産物が多様な原料になる …12段落
      ・1つの労働過程で、1つの生産物が、
       次の生産の労働手段にも労働対象にもなる …13段落
      ・中間生産物 …14段落
      ・全体の中での役割で、何になるかは決まる …15段落
      ・すべての過程を止揚したものが生産物 …16段落
        止揚されていないのは欠陥物

(4)生産と消費
    [1] 消費されない生産物は、使用価値が無になる
       …17、18段落
    [2] 生産=消費 …19段落
       2つの消費=2つの生産物=生産物と人間自身
    [3] 注釈 人間の労働によらない大地がある …20段落

(5)一般的な労働過程論のまとめ …21段落

(6)資本主義社会の労働過程の特色
    [1] 一般的な労働過程論から資本家と賃金労働者の関係にもどる
       …22段落
    [2] 資本主義社会の労働過程の2つの特色 …23段落
      ・労働も資本家のもの …24段落
      ・生産物も資本家の所有物 …25段落

    骨子は(2)労働過程内部、(3)その生産物から労働過程を振り返る、
   という2つ。この方針自体が、唯物史観をきっちり説明するには不十分。

    仮に、マルクスの大枠の方針を認めたとしても、本来は、
   (3)の[4]と(4)の[1]は、(2)の[6]の後に入れるべき。
   整理されていないので、読みにくい。

    マルクスがここで実際にやっていることは、労働関係の用語〔(3)の[4] 〕
   (原料、労働対象、労働手段、中間製品、など)を、全体の労働過程に
   位置づけることで、その用語の意味を確定すること。

    しかし、ここは本来は、そんなことをやる場所ではないはず。

C 本来の構成(代案)

      マルクスは労働過程論を、本来はどう書くべきだったのか。
     唯物史観の3要素はどこからどう導出されるべきなのか。
     以下に、私の代案を示す。

(1)資本主義社会の資本家と賃金労働者の話から、労働過程論へ

       資本主義社会の資本家と賃金労働者の関係が
      なぜ生まれたのか、
      そしてそもそも労働が価値であるとはどういうことなのかを
      理解するために、労働とは何か、人間労働が他の動物と
      何が違うのかを考えなければならない。

(2)労働における人間と動物の違い

    [1] 生物と自然の物質代謝が労働 
 
    [2] 動物一般や昆虫と人間の労働との違い 目的論
       目的意識性
      → 人間の思考(内的二分)
      → 対象世界をも二重化することを可能にした。

    [3] 自然への働きかけの変化 自然界を二重化した
       人間は、対象の自然を労働対象と労働手段に分け、
       労働手段で労働対象に働きかける方法に変わった。
       労働対象の説明
       労働手段の説明 →これが社会の生産力を規定する 

    [4] 人間は労働で、人間の社会を二重化した
       人間の現実の社会(存在)と、それを反映した法律、思想(当為)の世界
       これが生産関係と上部構造
       人間社会は対立分裂し、それによって発展する
       法律や思想もそれを反映する

    [5] 唯物史観 生産力を高め、発展するための発展
       労働手段を改良して生産力を高め
       人間の生産関係を発展させ
       法律や思想も発展させてきた。
       この3つの関係は相互関係であるが、従来は大きくは
       上が下を規定してきた。
       ヘーゲルの思想が生まれた以降は、思想が全体を指導する

(3)実体への反省 発展とは本質に反省する変化

      人間は労働過程を通して人間になってきた。
      自然も労働過程で本来の自然になってきた。
      可能性が現実化したと展開したのは、実体へ反省する準備で
      なければならない。
      人間の使命、自然が人類を生んだ意味を示す。
      自然の概念、人間の概念を説明する。

(4)唯物史観の立場からの人類史のスケッチ(人類史における労働過程)

      自然と人間の発展過程
      唯物史観による生産力、生産関係、上部構造の発展の過程

(5)資本主義段階の社会の簡潔な説明(その生産力、生産関係、上部構造)

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