4月 01

鶏鳴学園の中学生クラスを担当している田中由美子が本を刊行しました。彼女の人生で初めてのことです。
それは同時に、中井ゼミの仲間から、中井と師弟契約をしている弟子の中から、自分の本を刊行する初めてのことになります。
とても嬉しく思います。

彼女が中井ゼミで学び始めたのは50歳です。それから10数年、彼女はまっすぐに自分の道を歩んできました。この本はその成果であり、これからの彼女の未来を照らし出すものです。

彼女の人生の門出です。私たちにできる精一杯の祝砲を打ち上げなければならないと思います。

お祝いは、新しいステージの始まりの確認であるとともに、また、最も厳しい批判をすることで、次のステージへの送り出しの場にもならなければなりません。

5月(19日)か、6月(16日)にこの本の読書会を開催する予定です。
決まり次第、報告します。
みなさん、積極的にこの祝宴に参加してください。

そして今はまず、本を購入し、お手に取ってお読みください。

■ 目次 ■
1 『思春期の子どもと親、それぞれの自立 ―50歳からの学び直し―』について 田中 由美子
2 本書の目次
3 本書冒頭の「この本の読者へ」

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◇◆ 1 『思春期の子どもと親、それぞれの自立 ―50歳からの学び直し―』について  田中 由美子  ◆◇

この十数年中井ゼミで学び、また鶏鳴学園の中学生クラスを担当してきました。
これまでの鶏鳴学園での授業や、私自身の親としての経験を通して考えてきたことをまとめたのが、先月社会評論社から刊行した表題の本です。
https://www.amazon.co.jp/s?k=9784784517633&tag=books029-22

これまでの人生や子育ての中で、いったい何をどう考え、どう解決すればよいのか、たびたび戸惑い、悩んできましたが、授業で出会う中学生たちも様々な葛藤を抱えていました。
そして、彼らの本音や現実に向き合う中で、彼らが抱える問題は、大人たちやこの社会の問題をそのまま映したものではないかと考えるようになりました。
それは私自身がつまずいた問題や、家庭や学校の問題です。
そういった問題の本質とその対策について、かつて中学生だった子どもの親の立場から、現時点での考えを綴りました。

思春期の子どもの最大のテーマは「自立」です。  
それが、「いじめ」や不登校、勉強や進路進学の悩み、親子関係など、彼らが学校や家庭で直面しているあらゆる問題と関わる、彼らの課題ではないでしょうか。
しかし、「自立」とは、いったいどうなることが「自立」なのか、また、思春期の子どもを前に、周りの私たち大人は何ができるのでしょうか。 
子どもたちが行き詰まるとき、それは子どもだけではなく、私たち大人の「自立」が問われているのではないでしょうか。

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◇◆ 2 本書の目次 ◆◇

第一章 転機
1. 子どもたちの思春期
2. 50歳での転機
3. 「社会人・大学生クラス」(中井ゼミ)での自立のやり直し
4. 「中学生クラス」と「家庭・子育て・自立」 学習会
5. 問題に向き合う生き方

第二章 作文を読み合って話し合う授業
1. 率直に突っ込み合う
2. 問題を抱える中学生たち
3. 精一杯の作文にどう応えるか

第三章 小冊子「君たちが抱える問題の本質と、その対策」
〇 小冊子 「君たちが抱える問題の本質と、その対策」
〇 教材 「部活、サークル、クラスの行事などの問題」

第四章 中学生たちが抱える問題 学校編
1. 「いじめ」たことを書いた作文
2. 他人を傷つけるからよくないこと?
3. 「自分が傷つくのも嫌」
4. 思春期に対立は必然
5. 「傷つけてはいけない」という行き止まり
6. 相手への疑問や批判は直接本人に言う
7. 最終目標は自立
8. 問題の本質を考える練習、言いたいことを言う練習
9. 不登校は「ズルい」?
10. 不登校はタブー?
11. 秘密主義
12. 部活やクラスにルールがない
13. 裏ではなく表で対立できる仕組みを
14. 自立に向かうためのルール

第五章 中学生たちが抱える問題 家庭編
1. 教育虐待
2. 中学受験って何だったのか
3. 「空白」を埋めるスマホ
4. 学びたいテーマを持つという自立
5. 「母が絶対権力」
6. 兄弟や親の問題
7. 子どもの権利の代行という親の役割
8. 親子それぞれの自立
9. 子育て後の第二の人生

第六章 経済成長と「家父長制」の次へ
 ― 親の、その親からの自立 ―
1. 父との関係の節目
2. 親子関係の意味

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◇◆ 3 この本の読者へ ◆◇

本書は、国語の塾の一講師として、この十余年中学生たちが抱える悩みや葛藤に向き合ってきた結果、いったい何が彼らの問題の本質なのか、また、どう解決すべきなのか、その考えをまとめたものです。学校でも家庭でもない場だから、彼らは本音を語り、作文に表現したのではないかと思います。そして、作文をもとに話し合う中で、さらに生の声が飛び出しました。

また、子どもたちの問題を論じると同時に、そうした子どもたちの問題の解決に向けて努力しておられる保護者や学校関係者、つまり、私たち大人自身がどうあるべきかについても論じました。中学生たちの本音や現実に向き合っていると、その後ろに、私自身がつまずいた家庭の問題や、学校、社会の問題が浮かび上がってきたからです。

それを、かつて中学生の子どもの親であった私の経験や思いからまとめています。タイトル、『思春期の子どもと親、それぞれの自立』は、その意味です。

私は、長年ほぼ専業主婦でしたが、50歳からがらりと毎日の生活を変えました。
家事以外の仕事や勉強に多くの時間を割くようになったのですが、何よりも大きく変わったことは、誰か他の人のことではなく、私自身のことを考え続けて生きるようになったことです。

当時子どもたちはもう高校生と大学生でしたから、とっくにそうしていてもよかったはずですが、むしろ私は、彼らの中学生の頃からの思春期に「心配」をふくらませていました。
ほんとうは、子どもがどうだからとか、主婦だったからではなく、私は、私自身を生きるということを、ついぞ知らなかったのだと思います。家族を含めた他人(ひと)の顔色をうかがったり、他人の「心配」をしたりということが、私が生きているということでした。しかし、その実私は、子どもたちのことも含めて、身近な誰の気持ちに寄り添うすべもなく、ひとりぼっちで生きていたように思います。40代でいろいろなことがうまくいかなくなり、苦しくなりました。自分の人生の先を見失っていました。

50歳で転機を迎えた私は、それからの14年間、私が抱えていたいくつかの問題の本質が何だったのか、少しずつ目を開いてきました。その後始めた学習を共にする仲間や、塾に通ってくる中学生たちを通してです。遅いスタートですが、しなければならないこと、そしてまだまだやれることはいくらでもありました。自分をよりよく知ることだけが私自身を支え、ようやく自分の全責任で、自分で納得できるような生き方へと踏み出せました。

また、私がかつて一人でもやもやと悩んでいたことは、実は、思春期の子を持つ多くの親が抱えている不安でもあったことを、仕事を通して知りました。子どもが大人になろうという思春期に、親自身がどう大人になり、どう生きてきたのかが問われるからです。夫婦関係も問われます。私は親兄弟との関係にも課題を抱えていましたが、それも少なからぬ人が抱える問題でした。

子どもの思春期は、子も親も嵐のときです。その嵐の中の中学生たちが作文に書いてくる問題や、彼らが授業の中で語ることに突き動かされて、彼らと私自身の問題のありかを探ってきました。私も40代に、思春期の子どもたちの、一人の親だったからです。

そして、子どもたちの行き詰まりは、実は私たち大人の行き詰まりをそのまま映し出したものではないかと考えるようになりました。私たちがまず自分自身を生きて、本気で自分を変えることだけが、私たち自身を救い、そして、そのことによって子どもたちも前へ進むことができるのではないでしょうか。

では、かんたんに本書の構成を説明させていただきます。
まず、第一章で、私が50歳でどのように転機を迎えたのか、自己紹介をします。
第二章は、その後始めた、塾での仕事、中学生どうしで互いに作文を読み合って話し合う授業の大枠を説明します。この後の第三?五章に書くことの背景です。
第三章には、その教育活動を通して見えてきた、今、中学生たちが抱える問題と、それをどう考え、どう解決を図るべきなのか、現時点での私の答えの一覧を掲載します。授業で使う教材の一つ、小冊子「君たちが抱える問題の本質と、その対策」です。
第四・五章は、第三章の考えに至るまでの具体的なプロセスです。中学生たちがどんな作文を書いてきて、どんな思いを語るのか、そして、そこにどんな問題の本質が見えてきたのかを記します。第四章は、学校での問題、第五章は、生徒たちにとってさらに切実な、家庭での問題です。

そして、第六章に、再び私自身のことを書きます。ただし、今度は親としての私のことではなく、子としての私の、私の親からの自立の問題です。
中学生の成長や自立を後押しする仕事をする中で、近年、実はその後ろに、彼らの親が、その親(生徒たちの祖父母)からどれだけ自立できているのかという重い課題があると考えるようになりました。また、それは、生徒たちの祖父母の時代から今現在まで、社会状況は大きく変化してきたにもかかわらず、学校や社会のあり方が根本的にはなかなか変われないことと深くつながっていることではないでしょうか。
私の両親との親子関係、さらに、両親とその親との親子関係までをふり返って考えたことを、最後の章に記します。

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