1月 14

 ヘーゲル『精神現象学』「自己意識」

 一昨年(2009年)の夏の合宿では、ヘーゲル『精神現象学』の
第1部「対象意識」を、昨年(2010年)の夏には第2部「自己意識」を読んだ。

今回、「自己意識」論を読んで考えたことをまとめた。
使用したのは、牧野紀之の訳注(未知谷)と金子武蔵の訳注(岩波版全集)である。
ページ数は牧野紀之の訳注(未知谷)から。

 ■ 全体の目次 ■
 一.ヘーゲル『精神現象学』の第2部「自己意識」論の課題

 二.形式の課題の(1)(2)(3)の答え
 1)ヘーゲルは「逆算」して書いている
 2)対象意識と自己意識の順番と関係
 
 以上(→その1)

 3)自己意識論をなぜ、欲求や生命から始めたのか
 4)人間の羞恥心と狼少年

 以上(→その2)

 三.主と奴
 (1)冒頭
 (2)承認
 (3)主と奴

 → 以上(その3)
  
 四.自己意識の自由
 (1)主と奴と「ストア主義と懐疑論」
 (2)ストア主義も懐疑論もともに抽象的で一面的
 (3)不幸な意識  
 (4)不幸な意識の展開
 (5)どうしてここから理性が出るか、精神が出るのか。主体性の確立。

 → 以上(その4)

 五.竹田青嗣(たけだ せいじ)をどう考えるか
 (1)「精神現象学」派と「論理学」派
 (2)竹田による「自己意識論」の解釈
 (3)竹田の限界

 → 以上(その5)

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ヘーゲル『精神現象学』「自己意識」その3

三.主と奴

 (1)冒頭

[欲望]※自己意識と対象意識の統一の一番原始的な形態
    他者の存在の自覚、他者の否定=自己確認、自己形成。他者は否定されるべき
  ↓

[食欲]生きる時間、起きている時間のすべてを食べる時間にしている生物がほとんど。
    小鳥など。
    食欲が生物にとって、いかに根源的か。
  ↓

 食欲の対象は[生命]
 ※ここで、対象意識から、その対象へと話を転し、
  対象としての生物発展の運動から人間の発生を説明する※

 人間の雑食性。食物連鎖のトップに人間が立つ。
 食物連鎖の中に類の発展。
 地球から生物発展の全過程が、この食物連鎖の背景にある。
 このトップとして人類があること。
 それが、人間のみが「思考する」(他のすべてを止揚できる)ことの意味でもある。

  ↓

 生命の運動 ※対象としての人間から[自己意識]を説明する
 [類]類内の個と個。[自己意識と自己意識]。
 類の意識のうちで、生命の運動(主と奴以下の展開)が展開される
 精神(社会的意識)。

 (2)承認

 承認を「人間」としての根源的な欲求として、とらえることの本当の意味は何か。
人間が事実として社会関係の中でしか、人間になれないと言うことを述べている。

【1】他者からの承認は、自己確認であり、ほめてもらう、上位に立つことに限定されず、
  その反対も多い。
  嫌われること、叱られることで自己確認、自分に注目してもらうことも多い
 (男の子が好きな女の子をいじめたりして泣かせる)

【2】集団のいじめ、そこでの「受け」も、承認論で考えるべきだ。
  子供の世界の上下関係は、力で決まる。親分・子分関係。

【3】親からの承認(関心、注意)を得られるかどうかは、子供にとって生死の境目。
  親子関係、友人関係で自分を考えるとき、自分と他者の両者を超える視点が必要。
  類の自覚の必要

【4】ヘーゲルの承認論。他者として誰でもいいわけではない。選択していく。
  偶然の友人 → ライバル、ある特定の人 → 先生 → 人類の歴史に名を残した人 → 神
  この辺を具体的に展開すべき。それがない。

 (3)主と奴、逆転(346)。危機感と労働
    能力の問題がある

 2つの例

【1】個人の内では精神と肉体の。思考と感性
  いわゆる「精神分裂病」(統合失調症)は、悟性に抑圧された感情が、
  自分を死守するために引き起こしている症状なのではないか。

【2】社会では、資本家とプロレタリアートが例にされる。※これは正しいか

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