4月 19

「聞き書きと宮本常一」
香月洋一郎氏(民俗学:前神奈川大学教授)の講演と討議
           高校作文教育研究会、鶏鳴学園共同開催

聞き書きはとても豊かな可能性を持った方法ですが、それだけに実に多くの、そして根源的な難問を孕んでいる方法でもあります。だからこそ、圧倒的な豊かさと可能性を持っているのですが、その難問の前に立ちすくむことも多いと思います。
それを一緒に考えてみませんか。

また今回は民俗学の現在を知る良い機会でもあります。民俗学の意義は、私たち日本人が、近代化や、敗戦と戦後の高度経済成長の過程で失ったものを考えるようになることです。それは私たちの社会の表面からは消えたように見えながら、実際は社会の基底をなし、私たちの無意識の部分を支配していることが多いと思います。
日本の民俗学は柳田国男に始まりますが、宮本常一はそれを深めました。それは『忘れられた日本人』岩波文庫(「土佐源氏」「梶田富五郎翁」を収録)を読むとよくわかります。これが聞き書き作品です。今回の講演者の香月氏は宮本の直弟子の方です。

(1)日時 5月21日(日曜)午後1時より午後4時半まで
(2)場所 鶏鳴学園にて
(3)参加費 1千円
(4)参加希望者は、以下まで連絡ください。

================================
 連絡先 〒113?0034 東京都文京区湯島1?3?6 Uビル7F
       鶏鳴学園 香月講演会事務局
  TEL 03?3818?7405、FAX 03?3818?7958
事務局メールアドレスkeimei@zg8.so-net.ne.jp
================================?

1.講演者・香月洋一郎氏について

 1949年福岡県生まれ。一橋大学社会学部卒業。日本観光文化研究所所員を経て、2009年まで神奈川大学経済学部教授、日本常民文化研究所所員。
香月氏は民俗学者ですが、『忘れられた日本人』などで有名な宮本常一氏の直接の薫陶を受けた方です。
著書ですが、民族誌としては『山に棲む―民俗誌序章』(未来社)『海士(あま)のむらの夏―素潜り漁の民俗誌』(雄山閣)、聞き書きについては『記憶すること・記録すること―聞き書き論ノート』(吉川弘文館)があります。
他に『むらの鍛冶屋』『空からのフォークロア―フライト・ノート抄 』『猿曳き参上―村崎修二と安登夢の旅』『景観のなかの暮らし―生産領域の民俗』『フィールドに吹く風―民俗世界への覚え書き』など多数。

2.講演と討議について

(1)聞き書きについて
 鶏鳴学園の代表の中井は、高校作文教育研究会に関わっています。そこで数年間にわたる聞き書きについての共同研究を行ったことがあります。その時に、数々の難問に遭遇しました。
 聞き書きの文体はどうあるべきか。話が事実とは違う場合、それをどう考えるべきか。その話の中に、ドラマのような劇的な内容がある時に、その表現も劇的な構成やドラマ性を表現できる文体になる。それをどう考えたらよいのか。
さらには、人が自分の経験を「語る」とはどういうことか。それを聞く聞き手と話し手とはどういう関係なのか。人が意識している人生の記憶とはどういうものなのか。
 これらのかなり根源的な問いにぶつかり、それを考えている中で、1冊の本に出合いました。それが『記憶すること・記録すること ?聞き書き論ノート?』(吉川弘文館)です。
私が問題にしていることが、そこでも問題にされ、深く考え抜かれていました。やっと出会うべき本と人に出会えたと思いました。その本の著者が香月洋一郎さんです。

(2)宮本常一について
香月さんのそうした試行や模索の根底には、民俗学の巨人・宮本常一がいるようです。香月さんは宮本さんの弟子であり、その方法と考え方、生き方の大きな影響下にあるようです。
香月さんには、その宮本の行動、思想、それと言葉との関係を話していただきます。
宮本の有名な『忘れられた日本人』(その中に「土佐源氏」「梶田富五郎翁」などが収録)についてもうかがいます。この『忘れられた日本人』は聞き書き作品ですが、最高の文学でもあり、日本人とは何かを考え、日本人がその近代化、戦後の高度経済成長の過程で失ったものを考えるための最良のテキストでもあると思います。

2月 16

第15回聞き書き甲子園フォーラム&15周年記念イベント
    「未来をひらく『聞き書き』の力」

聞き書き甲子園を知っていますか。

毎年、全国100人の高校生が“森・川・海の名人”に「聞き書き」し、自然と共に生きる知恵や技、価値観を学びあい、それを報告し冊子にまとめてきました。
その「聞き書き甲子園」が今年15年目を迎えました。

その記念イベントが、東京で3日間(3月18?20日)開催されます。

私は3日目のシンポジウム「未来をひらく『聞き書き』の力」に参加します。

昨日(2月15日)、聞き書き甲子園の事務局の方と打ち合わせをしました。
聞き書き甲子園の裏方の人たちと話せたので
このイベントが15年続いた理由がわかったように思います。

記念イベントの詳細は以下ですが、
香月洋一郎氏(民俗学:前神奈川大学教授)など、さまざまな現場での聞き書きの取り組み、の報告があったりと面白そうな企画があります。

ご都合がつけば、ご参加ください。

□◇―――?―????????―?――?――――――――――――――
第15回聞き書き甲子園フォーラム&15周年記念イベント
    「未来をひらく『聞き書き』の力」
――――――??――――――――――――――――――――――――――◇□

 全国100人の高校生が“森・川・海の名人”に「聞き書き」し、自然と共に生きる知恵や技、価値観を学ぶ「聞き書き甲子園」。この「聞き書き甲子園」が今年15年目を迎えました。
 近年、総合的な学習の時間の意義やアクティブ・ラーニングによる能動的な学びへの関心の高まりにより、「聞き書き」の教育的価値やその意義が注目されています。
 15年目を機に「聞く」ことの意味を見つめ直し、「聞き書き」のひらく未来について、文科省初等中等教育局視学官の田村学氏や国語専門塾鶏明学園塾長の中井浩一氏をはじめとする教育者を交え、様々な分野の実践者と考える「15周年記念イベント」を3日間に渡り、開催します。
 多くの皆様のご参加をお待ちしております。
(詳細:http://www.foxfire-japan.com/program/forum.html)

◆日時 2017年3月18?20日
◆場所 東京大学弥生講堂一条ホール
(地図:http://www.a.u-tokyo.ac.jp/yayoi/map.html)

◆プログラム
◇◇◇18日(土)13:30?16:45  第15回 聞き書き甲子園フォーラム◇◇◇
 森や川、海の「名人」に「聞き書き」をした高校生は、その出会いから何を得たのでしょうか。「聞き書き甲子園」がはじまった当初から活動を応援いただいている阿川佐和子さんの記念講演とともに、「聞き書き」を終えたばかりの高校たちのホットな体験談をお伝えします。
・記念講演「聞き書き甲子園と私」 講師:阿川佐和子氏
・聞き書き体験発表(参加高校生と名人3組が登壇)聞き手:塩野米松氏 ほか

◇◇◇19日(日) 15周年記念イベントPart1
     ぼくらのアクション?それは「聞くこと」からはじまった?◇◇◇
 「聞いただけで終わりにしたくない」――名人との出会いをきっかけに、「聞き書き」を経験した高校生たちは未来への一歩を踏み出しました。農山漁村に憧れ、通い続ける高校生たち。そして各地にIターン・Jターンした「聞き書き甲子園」のOB・OGたち。地域とつながる、地域で生きる。その可能性や魅力を語ります。
<午前の部>10:00?12:10
・ドキュメンタリー映画「森聞き」上映 (プロダクション・エイシア製作)

<午後の部>13:30?16:00
・トークセッション? 地域とつながる ?高校生発!イノベーションの萌芽?
スピーカー:第15回聞き書き甲子園参加高校生 
  ゲスト:小川悠(i-club 代表理事)
・トークセッション? 地域で生きる ?名人の想いを継ぎ、これからを生きる?
スピーカー:「聞き書き甲子園」OB・OG代表
  ゲスト:近江正隆(ノースプロダクション代表取締役)
※16:30より、ロビーにて立食パーティーあり(希望者のみ/要予約)

◇◇◇20日(月・祝) 15周年記念イベントPart2
             「聞き書き」の可能性?新たな価値の探求?◇◇◇
 1960年代半ば、アメリカ・ジョージア州でFoxfireと呼ぶ活動が始まりました。高校生が地域の知恵や技術を掘り起こし、本にまとめたのです。「聞き書き甲子園」は、この活動をヒントに始まりました。いま、「聞き書き」は全国各地に広がり、さまざまな分野で実践されています。「聞き書き」は誰を幸福にし、どんな未来を創るのか。その可能性を探ります。

<午前の部>10:00?12:20聞き書き甲子園講師)
・トークセッション?「聞き書き」の広がり?さまざまな分野での実践?
  スピーカー:香月洋一郎(民俗学:前神奈川大学教授)、大嶋健三郎(緩和
        ケア:あそかビハーラクリニック院長)、市村高志(震災復興:
        とみおか子ども未来ネットワーク理事長)、駒宮博男(地域づ
        くり:地域活性化機構理事長)
※12:20より、ロビーにてランチ交流会あり(希望者のみ/要予約)

<午後の部>13:30?16:00 
・15周年記念講演「アメリカFoxfireの活動とその意義」講師スミス=ヒルトン氏     
・トークセッション?「聞き書き」の未来?人と人、人と自然とつなぐ?
  スピーカー:中井浩一(国語専門塾鶏鳴学園塾長)、田村学(文部科学省初等
        中等教育局視学官)、阿部健一(総合地球環境学研究所教授)ほか

□お申し込み・問い合わせ
◆参加費:無料  
※ただし、立食パーティーは2000円、ランチ交流会は1000円の参加費あり。
◆定員:250名(18日は150名) ※先着順
◆申込み締切:3月15日(水)
 ※立食パーティー、ランチ交流会は、3月10日(金)まで
 ※定員に達しない場合は、当日のご参加も可能です。
◆申し込み方法:FAX、もしくは専用フォームにてお申し込みください。
専用フォーム→
https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSdey1jr5AK-JPJ9kPnLGhsrgQEHhfKFf6ApjkGSijJNIkmkTA/viewform
FAXの場合→「フォーラム申込み」と明記の上、?氏名?電話?住所もしくは
Eメール?所属?参加希望内容(18日/19日午前/19日午後/19日立食パー
ティー/20日午前/20日ランチ交流会/20日午後)を記載し、下記宛にお送
りください。

◆お申込み・問い合わせ先
NPO法人共存の森ネットワーク(聞き書き甲子園実行委員会事務局)
TEL:03-6432-6580 FAX:03-6432-6590 E-mail : mori(at)kyouzon.org

【主催】聞き書き甲子園実行委員会

11月 18

大修館書店のPR誌『国語教室 104号』(2016年秋号)が刊行されました。

その「えつらんしつ」(大修館書店の新刊紹介)で
『「聞き書き」の力』が紹介されました。

広島大学教育学研究科
国語文化教育学講座の
田中宏幸さんが書いてくれました。

11月 11

高校作文教育研究会の12月例会

今年最後の例会になります。

4つの報告と討議があります。

1つめは“働く人への聞き書き”の実践で、神奈川の冨田さんの報告です。
昨年高1から始めて今年高2になった生徒たちへの2年目の実践です。

2つめは、田中由美子さんが鶏鳴学園の中学生クラスで指導した生徒作品を検討します。

3つめは、札幌市の新たな中高一貫校設立に尽力していた小泉さんの報告です。
どんな学校ができるでしょうか。

4つめは、歴史教育に学ぶと題して、『記憶と認識の中のアジア・太平洋戦争』の一部を読み合います。
改めて戦争体験を聞き書きすることの意味を実践史的視点から考えてみます。

どうぞ、みなさん、おいでください。

1 期 日    2016年12月4日(日)10:00?16:30

2 会 場   鶏鳴学園

〒113?0034  東京都文京区湯島1?3?6 Uビル7F        
  ホームページ http://www.keimei-kokugo.net/
       ※鶏鳴学園の地図はホームページをご覧ください

3 報告の内容

(1) “働く人への聞き書き”の実践
  神奈川 県立上溝南高校  冨田 明  

1学年時に国語総合で“青春時代?できたら戦争体験”の聞き書きをし、
総合で”働く人へのインタビュー”のグループ学習と発表をした学年。

今年は“働く人への聞き書き”を現代文B夏の課題に出しました。
その中から、2?3人の作品を読んでいき、成果や課題を出していただければと思います。

(2) ショートレポート 課題と生徒作品

それぞれの先生方の教育現場には、その現場での課題があり、
それに取り組みながら少しでも生徒たちのためになるように苦闘を続けていると思います。
そこから生まれた生徒作品から、読み取りに困惑したり、
その課題をどう考えどう指導したらよいかわからないような作文を持ち寄り、
意見交換をして互いの実践を深めていきたいと思います。

今回は前回の報告に引き続き、
田中由美子さんが鶏鳴学園の中学生クラスで指導した生徒作品を検討します。

(3) 市立札幌開成中等教育学校の挑戦ー課題探究的な学習の推進とその方策の検討
  北海道 札幌開成中等教育学校 小泉泰之

 札幌市教育委員会の高校改革のひとつとして
既存の高等学校を再編する形で作られた中高一貫校の教育内容に関し
「生徒自らが主体的に学ぶ課題探究的な学習の推進」
「大学受験準備に偏した編成をしない教育課程」を柱とした学校づくりについて、
現場教員及び教育委員会職員とそれぞれの立場での取組と、
現在進行形で構築している新しい学校の教育課程編成の具体を紹介します。

(4) 歴史教育に学ぶ                (東京)宮尾美徳・志波昌明
 
 教師自身の戦争責任、戦後責任って何?それってその後の教育にどう影響したの?
戦争体験を語り伝える根源的な意義って何?
改めて戦争体験を聞き書きすることの意味を実践史的視点から考えてみましょう。

〈テキスト〉
「歴史教育の中のアジア・太平洋戦争―戦争体験を綴ることの意味(著者 今野日出晴)」
           (出典『記憶と認識の中のアジア・太平洋戦争』2015年 岩波書店)
(もくじ)
 はじめに
 一 「戦争教育」記録運動―地下水としての北方性教育
  1 『山形の教育―学校白書と戦争教育の記録』
  2 『教育北方―学校白書と戦争教育の記録』
  3 「戦争教育の記録」を綴ることの意味
 二 教室の中の「戦争体験」から地域の中の「戦争体験」へ
  1 「母の歴史」と「私たちの歴史」、そして「父母の歴史」
  2 地域のなかの「戦争体験」を掘りおこす
 おわりに

参加希望者にはテキストのコピーをお送りします。

4 参加費   1,500円(会員無料)

================================

  事務局メールアドレス keimei@zg8.so-net.ne.jp

================================

10月 25

「日本教育新聞」(10月24日)に『「聞き書き」の力』の書評が掲載されました。