1月 27
鎌倉の近代美術館で「関合正明展」を見た。良かった。久しぶりに、「欲しいな」と思った絵だ。
今回の鎌倉行きのお目当ては、近代美術館の鎌倉館で行われている「所蔵展」で、大正期から昭和の日本近代洋画の逸品を見ることだった。何度も来て、何度も見ているが、それでもまた来たくなる。萬鉄五郎、岸田劉生、関根正二、梅原龍三郎、三岸好太郎、松本竣介、麻生三郎。関根正二に萬鉄五郎のような南画風の絵があることを初めて知った。
「おいしかった」と心地よくなってから、いつものように、鎌倉別館にまわる。そこでたまたまやっていたのが「関合正明展」。知らない画家だった。
童女の小さな絵、海と岸辺、桜島噴火、ポルトガルの風景、山と森林、1枚を除くと、どれも小さな画面のものがずらりと並んでいた。噴火のような過激な題材はあるが、どれも静かで、こころの奥底までしみてくる。「好きだな」「いいな」とつぶやきながら一巡した。そして、もう一度、ゆっくりと見て回る。

ペニシ風景
その形、空や海や山肌の色使い、厚塗りの画面。その心地よさは、須田国太郎が私に与えてくれるものに近い。「懐かしさ」が、私のこころの奥底にあるものを引き出し、それに形と色を与え、成仏させてくれる。

彼については、以下のような説明がHPには掲載されている。今回が、「初めての公立美術館での回顧展」とあるように、孤立した画家だったようだ。
関合正明(せきあいまさあき)は大正元年(1912年)に東京の明石町に生まれ、川端画学校で学んだのち27歳で中国大陸に渡りました。そして満州国の文教部嘱託画家として働きながら満州国主催美術展覧会での特賞を受け、一躍注目を浴びるなか「黄土坡美術協会」を結成します。終戦により帰国し、1947年から2年間のみ国画会に参加した後は完全に画壇をはなれ、挿絵や装丁の仕事のかたわら個展での作品発表と句集・随筆集の執筆にいそしむ独行の画家・文人として、その闊達な人柄と相まって静かに熱烈な支持者を増やしていきました。
多くの交友関係のなかでも、満州時代に知り合い、『青い雲』(1969年読売新聞連載小説)や『リツ子・その愛』『リツ子・その死』などで挿画を提供した小説家の檀一雄との交友は、戦後ふたたび画家を海外へと連れ出します。
1970年にポルトガル在住の檀に招かれ渡欧したのを機に、ヨーロッパやカナダ、韓国、インドネシアで描かれたスケッチをもとに、味わい深い風景画の佳品をつぎつぎに生みだしました。また晩年、1974年に北鎌倉に閑静な住まいを構え、なにげない日常の事物にも鋭いまなざしを注ぎ、ますますその画境に深まりをみせることになります。
その非凡なデッサン力はさりげないカットにもうかがえ、底光りする魅力を放っています。
今回の展覧会は、2004年に亡くなった関合正明の画業を紹介する、初めての公立美術館での回顧展となります。油彩、水彩、パステル画、素描、挿絵や装丁の仕事、写真資料など約100点を展示いたします。
http://www.moma.pref.kanagawa.jp/museum/exhibitions/2008/sekiai/
2009年1月4日から3月22日(日曜)まで
会場 神奈川県立近代美術館 鎌倉別館
1月 27
1月19日からの開始(以降、毎週月曜日)
前半が「ヘーゲルの原書講読」、後半が翻訳を読んでいます。
1)5時半より ヘーゲルの原書講読 『精神現象学』序文
ズーアカンプ版全集の第3巻と牧野紀之訳『精神現象学』(未知谷)を手がかりにします。
『精神現象学』序文。初回は34ページ上から17行目からです。
2ページほどを予習してください。
2)7時半より 日本語の翻訳でヘーゲルの『法の哲学』(中公バックス世界の名著版か、中公クラシックス版)を読んでいます。
『法の哲学』はヘーゲルの「近代社会論」です。
昨年は第3部の「家庭」「市民社会」「国家」論から読みました。それを終えて第1部にもどり、その第1章まで読みました。今年は第1部の第2章「契約」から読みます。初回は、第2章「契約」と第3章「不法」を範囲とします。数回で読み終え、その後は『精神現象学』の本文を読む予定です。
1月 27
現在、私たちの社会は大きな転換期を迎えています。高度経済成長はすでにはるか昔に終わり、全く新しい世界が生まれています。にもかかわらず、以前の制度や価値観、意識が今も支配しています。もちろん、あちらこちらで、既成の枠組みは破綻を示し、そのきしみが、あらゆるところから響いてきます。新たな世界をとらえ、それに対応する制度を作ろうと、一部の良識的な方々が努力はしています。しかし、誰もそれに成功していません。読者のみなさんは、こうした世界に放り出されているのです。
こうした時ほど、射程を長くして、今の時代の根底からしっかり考え直したいと思います。それは「近代」を徹底的に考え抜くことだと思います。「現代」は「近代」の一局面でしかありません。
ヘーゲルは、近代の原理(概念)をとらえることに成功した最初の哲学者だと思います。彼は、私たちにとっての最強の道先案内人だと思います。
1月 27
(1)2月 エーリッヒ・フロム (著) 『破壊 下 ―人間性の解剖 』
紀伊國屋書店 (1975/01)
昨年は秋葉原で起こった派遣労働者による無差別殺人が話題になりました。近年こうした犯罪が話題にされることが多くなりました。
本書は、『自由からの逃走』で有名なエーリッヒ・フロム(フロイト派の精神分析家)が、人間の破壊衝動について書いたものです。それを本能や環境のせいにする俗論を排し、人間だけの持つ意識のありかたから説明しようとします。豊富な症例やヒトラーの人生の分析が例示されます。
上下で800ページほどの大著ですが、核心は後半ですから、下巻を読みます。アマゾンでは「中古商品」で1000円ほどで入手できます。
(2)3月 「全体主義の時代経験 」(藤田省三著作集 6)? みすず書房 (1997/10)
購入される方は、単行本ではなく、 「藤田省三著作集 6」をお求めください。
藤田は『精神史的考察』で有名な歴史家です。本書は彼の遺書とでもいう本で、高度成長が終わりバブルで浮かれた80年代の精神状況を描き出します。著者は人類史と20世紀史から、その精神状況を「安楽への隷属」と規定しました。この「断絶」と「安楽への隷属」という規定は、今の時代の本質と深く関わっていると思います。
1月 27
毎回、開始は7時より。5時からは各自の「報告会」があります。
2月
7日 文ゼミ
21日 読書会 エーリッヒ・フロム『破壊』
3月
7日 文ゼミ
21日 読書会 藤田省三「全体主義の時代経験」