◇◆ 旧約聖書を読んで ◆◇
2.旧約についてのメモ
(1)ユダヤ民族の特異性
1その弱さと強さ それが人間の普遍性の象徴になったことの意味
2弱小民族の生き残り戦術。巨大国家と強力な民族の間の弱小民族の悲哀。
「寄寓」「よそ者」。
土地を持てない(墓のための土地を所有するのが限界)、さすらい人。
それゆえに、「よそ者」として生き抜いていく戦略が必要で、
「契約」を中心とする生き方を徹底した。所有、財産への希求の切実さと強烈さ。
3しかし偉大な人物の多さ。マルクス、フロイト、レヴイストロース、
アインシュタイン、スピノザ
(2)一神教の神(ユダヤ教)とは何か
1背景 弱小民族の絶望。圧倒的な孤独。満天の空と砂漠。
2人間と契約をする神 その契約内容が律法
したがって、人間とダイアログ(対話)をする神である
3論理的には、自己内二分、自己意識が生んだ絶対的他者
→ 自己と他者との区別の絶対性(先生と生徒)
4契約関係から、人間の平等の原理が生まれる
5死後の話はない。今生がすべて
(3)西欧(キリスト教)、イスラム世界における、世界観、社会観の基盤であり、大前提
1キリスト教の三位一体性(弁証法)はすでに旧約にある
2西欧の芸術の根源(絵画や小説や音楽)
ゴーギャン、ドストエフスキー、ヘッセ、トーマス・マン、スタインベック『エデンの東』など無数
彼らには、常にキャッチボールの相手がいる。 モノローグにならない
(4)人間の悪、色と欲望の世界が全面展開されている。圧倒的なリアルさである。
これでもか、これでもかというまでの、執拗さ
殺人、かけひき、だましあい、しのぎあい。男色や近親相姦。
主人公の多くが、悪行をした罪人である。
罪人なのに神に愛され救われる。善人がバカを見ている。
→問題は善悪ではなく、その存在の深さが問われている
(5)罪、悪、弱さの自覚の有無とその大きさ(絶望)が、
神を求め、契約、法を求めさせ、守らせる。
(6)資本主義の大前提(マックス・ウェーバー)
「契約」の重さ 私的所有と契約
道徳ではなく契約、リアルな人間関係の認識、能力主義
(7)「えこひいいき」(神も両親も)と、それへの怒りと人殺しばかりである
1人間がいかに承認と愛されることを求めるか
2それは問題はない。問題は、その求める承認のレベルである。
誰からの承認を求めるのか。それが核心。
事実としては、それぞれの人のレベルに応じた承認を求めている。
3神も、両親も、えこひいきをする
対策は、各自が、神を求め、テーマを作るしかない。
(8)名前とは何か。それは使命を意味する
名前が変わるとは、使命が更新されること
神との契約関係は、どんどん更新されていくべき。
成長・発展のためだ
(9)旧約は書かれた文書ではない。書き言葉ではない。
伝承であり、語りであり、音韻と響き、歌やリズムである。
「民謡」のような繰り返しの多用、語呂合わせの言葉の群れ。
ムズカシイ顔して読むだけでは、この精神はとらえられない。
笑い、歌い、掛けあいの世界。掛け声やあいの手が入り、手をたたき、笑う。
そうした世界だ。