10月 14

 私は現在72歳になりました。これからの数年が、一番仕事をできる時だと思っています。
そう考えるようになったのは、この数年で、私の思想的立場を確立したと思うからです。

 それを表明したのが、この2月に刊行した『ヘーゲル哲学を研究するとはどういうことか』(社会評論社)です。
 これまでヘーゲルとマルクスについて本を書いてきましたが、いよいよ今回は、ヘーゲル哲学を発展させて、中井自身の哲学を生み出したと思っています。

 この読書会を5月24日(日曜)に行いました。

 この3月に鶏鳴学園の過去5年ほどの卒塾生に読書会と共同研究のお誘いのメールを出しました。
その結果、読書会には卒塾生から新たに8人の参加がありました。5人が大学生、3人が社会人です。
参加者には読書会の感想を書いてもらいましたので、その中から4人の感想を掲載します。

■ 目次 ■

久富東子
保阪明奈
宮下陽菜
S.K.

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久富東子

「先生を選べ」という中井先生の言葉が久しぶりに聞けて嬉しかった。先生から徹底的に学び、先生を追い越すことが目標であり、その上、先生を選び直すことは自然なことであると仰っているのを聞いて、そこらへんの教師が絶対に言えない台詞だなと思い、改めて中井先生に感心した。
 さらに、『悪と向き合う』という章の中にある「最悪なのは、悪を隠し、悪を見えないようにすることである。これをやめて、すべてをオープンにしなければならない。/他人事ではなく、悪はすべての人の内で活動していること、つまり自分や自分たちの内にも活動しているということを自覚し、その中に対立、分裂、矛盾があることを直視することが必要である」という文を読んで、ジャニーズ性加害問題や中居正広・フジテレビ問題は何年間も、組織内部に大きな問題があったが、オープンにせずにタブーになってしまった「悪」の典型的な例だなと思った。
 私は高校生のころからタブーに関心があったことをこの話を聞いていて思い出した。
タブーについて研究するのも面白いのかなと思った。
 ゼミに関する説明で、中井先生がやることは問わない、問うことはレベルと聞いて、私も大学生の時間がある時に、自分自身にガンガン問いを立てていきテーマ、問題意識を作りたいなと思った。

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保阪明奈

(1)自己紹介
 社会人2年目。親の仕事の都合で12歳までアメリカで暮らし、その後日本に移り、今年で12年目になる。
 今勤務している会社は、将来アメリカで働く機会があるという理由で入社したものの、それが本当に自分の求めているものなのかはまだ分からない。
 大学時代、就職活動を終えた後、わずかな貯金を取り崩し1か月フランスで貧乏旅をした。自分を既知の環境から切り離したら、自分はどう生きるのか。
 ただ、旅を終えても答えは見つからず、むしろ「自分は暮らしに何を求めているのか」という問いと虚無感だけが残った。

(2)読書会の感想
 この本を読んで、ヘーゲルは「発展」を、歴史・宗教・政治・労働・精神・生物などの視点から、横断的に「人間とは何か」、「人間はなぜ活動し続ける(べきな)のか」という問いに答えを出しているように感じた。
 すべての分野は、人間の営みと関係しているということを切り離さず、一つの大きな流れとして捉えているところが興味深かった。
 動植物のように生きることとは一線を引き、人間という種がどうして活動をしているのかを考えさせられた。

 また、読書会に今回参加してみて思ったことは、読書会は議論をする場というよりも、「自分がそのテキストをどう読んだか」を言葉にしてみて共有する場だと思った。
 専門分野も、年齢も、これまで経験したことの異なる人たちが、本を通じて集まり、それぞれの疑問や感想を共有する非日常的な空間が、面白かった。
 他の人の読み方を聞き、自分にはなかった視点を持ち帰り、また自分で考えるという繰り返しをすることに、意味があるのだと思った。

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宮下陽菜

 私は今大学二年生です。大学では日本と海外、主にアジアの経済状況について学んでいます。また発展途上国の経済状況、なぜ貧困は改善されないのかということも学んでいます。また経営論に結び付いた倫理学についても学んでおり、幅広い分野の学問を学んでいます。私のそこでの問題意識は経営倫理学の授業のときに先生が言っていた、海外の大学生と日本の大学生の意識の違いです。周りの大学生を見ると、ほとんどの学生が出席せず授業も一方的に講義を聴くものが大半を占めており、
自分について考える時間が圧倒的に少ないところに危機感を持っています。また海外では哲学の授業は基礎的に学んでいるのに日本ではないのもおかしいと思っています。
 読書会に初めて参加してみて、様々な年齢の方々が社会にでてどのように社会問題に直接対峙して、それに対してどのようにアプローチしているのかを聞くことができ、改めて自分は何者なのかという問いや、これからどうしたらいいのかについて考えさせられました。また本を読んでみて、自分が普段自分について考えているところの箇所については理解ができるところが少しあったのですが、わからない箇所が多くあり、自分の経験や考えが深まるにつれて意味が分かってくるのかなと思いま した。

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S.K.

・簡単な自己紹介
 30代 会社員

・感想
(1)中井ゼミ生が言語化した感想に対する私の感想
 国家公務員として活躍しているゼミ生が「最高の政策を立案するためには、最高の教材から学び、政策立案過程に活かす必要がある」という問題意識を持って哲学と対峙している事が、印象に残った。
 印象に残った理由は、「生活の中の哲学」を実践する事の一具体例のように思ったからである。
 松永先生が「ヘーゲルを発展させたらどうなるかを中井先生が試みているのではないか」と、中井先生の研究目標を推察していた事が、印象に残った。
 印象に残った理由は、研究過程として対象を追従する事は必要だが、研究目標として対象を単純に追従し続ける事は依存でしかなく、自分の哲学を作る事の意味を一具体例として言語化してくださったのが、この言葉だと思ったからである。

(2)師弟関係の比較に対する感想
 「ソクラテス?プラトン(アカデミア創設者)?アリストテレス」という師弟関係(著書29頁「古代ギリシャの哲学」)と、「ヘーゲルとその弟子たち」という師弟関係(著書22頁「ヘーゲルへの疑問」)との比較から、高い能力を持つ歴史的人物の人間関係を考察していた事が印象に残った。
 印象に残った理由は、哲学史という難しいテーマにおいても、鶏鳴学園卒塾生にとって非常に身近な問題提起をする事が出来るという点で、「問いを立てる」事の重要性を再認識できたからである。

(3)鶏鳴学園での指導テーマに関連する感想
 著書59頁「6-6 人間個人の成長、発展」の記述は、鶏鳴学園の指導テーマとしても繰り返し学ばせて頂いた内容であり、卒塾生として懐かしく思った。
 著書80頁の「個々人の能力の格差」の記述は、中井ブログにおいて資本主義に関連して繰り返し問題提起されていた内容であり、ブログ読者としてこれも懐かしく思った。
 後者について、先生を選んだか否かにかかわらず、民主主義社会においては能力の限界に悩む場面が誰しもあると思うが、これに対する中井先生の問いと答えが示唆に富むものだった。

(4)鶏鳴学園での教材に関連する感想
 私が在籍していた時の鶏鳴学園では、坂本多加雄著『天皇論─象徴天皇制度と日本の来歴』を教材とした過去問演習を行っていた。
 この教材で「現在が未来を変えるだけではなく、現在が未来を変えて、未来が過去を変え得る」という議論を行ったと記憶している。
 この議論と、著書54頁「6-4 目的意識と自然の変革」での記述内容が関連付いて、鶏鳴学園でサボりながらも一生懸命に学んでおいて良かったと思えた。

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