昨年の秋に、マルクスの労働過程論(『資本論』の第3篇第5章第1節)を
丁寧に読んで、労働価値説と唯物史観について考えてみました。
今回考えたことをまとめ(「マルクスの労働過程論 ノート」)、
その考え方の根拠となる原文の読解とその批判(「マルクス「労働過程」論の訳注」)
を掲載します。
■ 全体の目次 ■
1.マルクスの労働過程論 ノート
A 全体への批判
B 構成
C 本来の構成(代案)
2.マルクス「労働過程」論(『資本論』第1部第3篇第5章 第一節)の訳注
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■ 本日の目次 ■
1.マルクスの労働過程論 ノート(その2) 中井 浩一
B マルクスの労働過程論の構成
C 本来の構成(代案)
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B マルクスの労働過程論の構成
(1)資本主義社会の資本家と賃金労働者の関係の話から、
一般的な労働過程論へ …1段落
(2)一般的労働過程の内部構造
[1] 人間と自然の物質代謝が労働 …2段落
[2] 人間は労働で人間のために自然を変えてきたが、
同時に人間自身を変えてきた …2段落
・人間はその潜在的能力を労働によって発展(開花)させてきた
[3] 動物一般や昆虫と人間の労働との違い 思考=目的意識性
…2段落
[4] 労働過程の3要素 …3段落
人間労働(合目的的活動)→直前の[3]にあたる
労働対象 →次の[5]にあたる
労働手段 →次の[6]にあたる
[5] 労働対象 …4段落
[6] 労働手段 …5段落
[7] 傍流 空間が前提 …6段落
[8] 労働過程の結果・成果、それを止揚したのが生産物
…7段落
(3)生産物の立場からの、労働過程の検討
[1] 生産物の立場からの労働過程を振り返る 「追考」の宣言
…8段落
[2] 過去の生産物から新たな生産物が生まれ、それが次の労働の条件になる
…9段落
[3] 人類史からの事実命題 人間は労働の蓄積で、世界を変えてきた
…10段落
[4] 大工場内部での労働の蓄積
・主原料と補助原料 …11段落
・1つの生産物が多様な原料になる …12段落
・1つの労働過程で、1つの生産物が、
次の生産の労働手段にも労働対象にもなる …13段落
・中間生産物 …14段落
・全体の中での役割で、何になるかは決まる …15段落
・すべての過程を止揚したものが生産物 …16段落
止揚されていないのは欠陥物
(4)生産と消費
[1] 消費されない生産物は、使用価値が無になる
…17、18段落
[2] 生産=消費 …19段落
2つの消費=2つの生産物=生産物と人間自身
[3] 注釈 人間の労働によらない大地がある …20段落
(5)一般的な労働過程論のまとめ …21段落
(6)資本主義社会の労働過程の特色
[1] 一般的な労働過程論から資本家と賃金労働者の関係にもどる
…22段落
[2] 資本主義社会の労働過程の2つの特色 …23段落
・労働も資本家のもの …24段落
・生産物も資本家の所有物 …25段落
骨子は(2)労働過程内部、(3)その生産物から労働過程を振り返る、
という2つ。この方針自体が、唯物史観をきっちり説明するには不十分。
仮に、マルクスの大枠の方針を認めたとしても、本来は、
(3)の[4]と(4)の[1]は、(2)の[6]の後に入れるべき。
整理されていないので、読みにくい。
マルクスがここで実際にやっていることは、労働関係の用語〔(3)の[4] 〕
(原料、労働対象、労働手段、中間製品、など)を、全体の労働過程に
位置づけることで、その用語の意味を確定すること。
しかし、ここは本来は、そんなことをやる場所ではないはず。
C 本来の構成(代案)
マルクスは労働過程論を、本来はどう書くべきだったのか。
唯物史観の3要素はどこからどう導出されるべきなのか。
以下に、私の代案を示す。
(1)資本主義社会の資本家と賃金労働者の話から、労働過程論へ
資本主義社会の資本家と賃金労働者の関係が
なぜ生まれたのか、
そしてそもそも労働が価値であるとはどういうことなのかを
理解するために、労働とは何か、人間労働が他の動物と
何が違うのかを考えなければならない。
(2)労働における人間と動物の違い
[1] 生物と自然の物質代謝が労働
[2] 動物一般や昆虫と人間の労働との違い 目的論
目的意識性
→ 人間の思考(内的二分)
→ 対象世界をも二重化することを可能にした。
[3] 自然への働きかけの変化 自然界を二重化した
人間は、対象の自然を労働対象と労働手段に分け、
労働手段で労働対象に働きかける方法に変わった。
労働対象の説明
労働手段の説明 →これが社会の生産力を規定する
[4] 人間は労働で、人間の社会を二重化した
人間の現実の社会(存在)と、それを反映した法律、思想(当為)の世界
これが生産関係と上部構造
人間社会は対立分裂し、それによって発展する
法律や思想もそれを反映する
[5] 唯物史観 生産力を高め、発展するための発展
労働手段を改良して生産力を高め
人間の生産関係を発展させ
法律や思想も発展させてきた。
この3つの関係は相互関係であるが、従来は大きくは
上が下を規定してきた。
ヘーゲルの思想が生まれた以降は、思想が全体を指導する
(3)実体への反省 発展とは本質に反省する変化
人間は労働過程を通して人間になってきた。
自然も労働過程で本来の自然になってきた。
可能性が現実化したと展開したのは、実体へ反省する準備で
なければならない。
人間の使命、自然が人類を生んだ意味を示す。
自然の概念、人間の概念を説明する。
(4)唯物史観の立場からの人類史のスケッチ(人類史における労働過程)
自然と人間の発展過程
唯物史観による生産力、生産関係、上部構造の発展の過程
(5)資本主義段階の社会の簡潔な説明(その生産力、生産関係、上部構造)