11月 11

高校作文教育研究会の12月例会

今年最後の例会になります。

4つの報告と討議があります。

1つめは“働く人への聞き書き”の実践で、神奈川の冨田さんの報告です。
昨年高1から始めて今年高2になった生徒たちへの2年目の実践です。

2つめは、田中由美子さんが鶏鳴学園の中学生クラスで指導した生徒作品を検討します。

3つめは、札幌市の新たな中高一貫校設立に尽力していた小泉さんの報告です。
どんな学校ができるでしょうか。

4つめは、歴史教育に学ぶと題して、『記憶と認識の中のアジア・太平洋戦争』の一部を読み合います。
改めて戦争体験を聞き書きすることの意味を実践史的視点から考えてみます。

どうぞ、みなさん、おいでください。

1 期 日    2016年12月4日(日)10:00?16:30

2 会 場   鶏鳴学園

〒113?0034  東京都文京区湯島1?3?6 Uビル7F        
  ホームページ http://www.keimei-kokugo.net/
       ※鶏鳴学園の地図はホームページをご覧ください

3 報告の内容

(1) “働く人への聞き書き”の実践
  神奈川 県立上溝南高校  冨田 明  

1学年時に国語総合で“青春時代?できたら戦争体験”の聞き書きをし、
総合で”働く人へのインタビュー”のグループ学習と発表をした学年。

今年は“働く人への聞き書き”を現代文B夏の課題に出しました。
その中から、2?3人の作品を読んでいき、成果や課題を出していただければと思います。

(2) ショートレポート 課題と生徒作品

それぞれの先生方の教育現場には、その現場での課題があり、
それに取り組みながら少しでも生徒たちのためになるように苦闘を続けていると思います。
そこから生まれた生徒作品から、読み取りに困惑したり、
その課題をどう考えどう指導したらよいかわからないような作文を持ち寄り、
意見交換をして互いの実践を深めていきたいと思います。

今回は前回の報告に引き続き、
田中由美子さんが鶏鳴学園の中学生クラスで指導した生徒作品を検討します。

(3) 市立札幌開成中等教育学校の挑戦ー課題探究的な学習の推進とその方策の検討
  北海道 札幌開成中等教育学校 小泉泰之

 札幌市教育委員会の高校改革のひとつとして
既存の高等学校を再編する形で作られた中高一貫校の教育内容に関し
「生徒自らが主体的に学ぶ課題探究的な学習の推進」
「大学受験準備に偏した編成をしない教育課程」を柱とした学校づくりについて、
現場教員及び教育委員会職員とそれぞれの立場での取組と、
現在進行形で構築している新しい学校の教育課程編成の具体を紹介します。

(4) 歴史教育に学ぶ                (東京)宮尾美徳・志波昌明
 
 教師自身の戦争責任、戦後責任って何?それってその後の教育にどう影響したの?
戦争体験を語り伝える根源的な意義って何?
改めて戦争体験を聞き書きすることの意味を実践史的視点から考えてみましょう。

〈テキスト〉
「歴史教育の中のアジア・太平洋戦争―戦争体験を綴ることの意味(著者 今野日出晴)」
           (出典『記憶と認識の中のアジア・太平洋戦争』2015年 岩波書店)
(もくじ)
 はじめに
 一 「戦争教育」記録運動―地下水としての北方性教育
  1 『山形の教育―学校白書と戦争教育の記録』
  2 『教育北方―学校白書と戦争教育の記録』
  3 「戦争教育の記録」を綴ることの意味
 二 教室の中の「戦争体験」から地域の中の「戦争体験」へ
  1 「母の歴史」と「私たちの歴史」、そして「父母の歴史」
  2 地域のなかの「戦争体験」を掘りおこす
 おわりに

参加希望者にはテキストのコピーをお送りします。

4 参加費   1,500円(会員無料)

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  事務局メールアドレス keimei@zg8.so-net.ne.jp

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10月 25

「日本教育新聞」(10月24日)に『「聞き書き」の力』の書評が掲載されました。

10月 07

鶏鳴学園中学生クラスの講師募集と説明会
.
中学生クラスの講師を募集します。
募集について、下記の通り説明会を行いますので、関心のある方はぜひお越しください。

?中学生クラス講師募集に関する説明会

日時:10月23日(日曜)14:00?15:00
場所:鶏鳴学園

(1)参加をご希望の方は、事前にメールで(keimei@zg8.so-net.ne.jp)ご予約ください。
メールに、氏名、年齢、職業(学生・主婦)、最終学歴、住所、電話番号、および参加の動機を簡単にお書きください。

(2)ご予約の前に、鶏鳴学園のHPで、鶏鳴学園や中学生クラスについてお読みください。

〒113?0034
 東京都文京区湯島1?3?6 Uビル7F
           鶏鳴学園
ホームページ http://www.keimei-kokugo.net/
 

10月 04

今、時代が、そして教育政策が大きく変わろうとしています。
そうした状況に流されることなく、常に変わらない人間と教育の本質をふまえて、教育活動をしていきましょう。

今回の例会では3つの報告と討議があります。

1つめは、国語専門塾・鶏鳴学園で中学生クラスを開設して6年間。その活動を大きく振り返る田中さんの報告です。

2つめは、今年の6月に刊行した『「聞き書き」の力』の成果と課題の総括です。
『「聞き書き」の力』は2009年から2年間の共同研究の成果をまとめたものです。
その課題を意識しながら、今後の活動の中で、克服していきたいと思います。

3つめは、まとまった報告というよりも、
日々の教育活動の中から生まれた生徒作品から、読み取りに困惑したり、その課題をどう考えどう指導したらよいかわからないような作文を持ち寄り、
意見交換をして互いの実践を深めようという企画です。
トップバッターの2人が報告します。

どうぞ、みなさん、おいでください。

1 期 日    2016年10月16日(日)10:00?16:30

2 会 場   鶏鳴学園
〒113?0034  東京都文京区湯島1?3?6 Uビル7F        
ホームページ http://www.keimei-kokugo.net/
       ※鶏鳴学園の地図はホームページをご覧ください

3 報告の内容

(1) 自分自身の閉じこもり体質との闘い
東京 鶏鳴学園 田中由美子

鶏鳴学園(私塾)の中学生クラスをスタートして6年目に入りました。

この5年間が何だったのかというと、何よりも、私が自分自身の殻をいくらか壊してきた過程でした。

当初は、授業に遅刻してきた生徒に「なぜ遅刻したの?」と訊くことさえできず、
何か事情があるのだろうと自分に閉じこもりました。

なぜ私はそんなことになってしまうのかと日々自分に突っ込むことが、
そのまま、生徒はどんな問題を抱えているのかということに、少しずつ目を開いていくことでした。

生徒の作文についてご報告し、意見交換させていただくことで、ここまでの成果と現在の課題を明確にしたいと思います。

(2) 『「聞き書き」の力』の成果と課題
          茨城 古宇田栄子、  東京 鶏鳴学園 中井浩一

 2009年から2年間の共同研究をし、その成果をまとめた聞き書き本を今年の6月に刊行することができました。

今回は、『「聞き書き」の力』の成果と課題を前向きに総括し、高校作文教育研究会の今後の学習会の方向性を考えてみたいと思います。
研究会を代表して執筆した2人が、その総括を報告します。

 『「聞き書き」の力』をご持参ください。また、当日販売も致します。割引価格2,200円です。

(3) ショートレポート 課題と生徒作品

それぞれの先生方の教育現場には、その現場での課題があり、
それに取り組みながら少しでも生徒たちのためになるように苦闘を続けていると思います。

そこから生まれた生徒作品から、読み取りに困惑したり、
その課題をどう考えどう指導したらよいかわからないような作文を持ち寄り、
意見交換をして互いの実践を深めていきたいと思います。

今回は2人の報告と、生徒作品の持ち寄りです。

茨城県 鹿島高校 久保有紀
「この夏は就職希望者やAO受験者の指導を行ってきたが、
働くということ、学ぶということに対する意識が十分でないように思われる。
表現をとおして意識を高めるにはどのようにしたらよいのだろうか」

正則高校 宮尾美徳
「生徒が本音で自分を語る。生徒が欠乏を自覚し、自分のニーズを語り始める。
4月からそれを目指してきた中で手にした生徒の声のその重さに、しかしたじろいでしまう。
それをどう読んだらいいか。」

4 参加費   1,500円(会員無料)

5 問い合わせや申し込みは高校作文研究会ブログにてお願いします。
   http://sakubun.keimei-kokugo.net/

5月 22

『「聞き書き」の力』(大修館書店)の序章「なぜ今、『聞き書き』なのか」 その4

■ 目次 ■

『「聞き書き」の力』
序章 なぜ今、「聞き書き」なのか  中井浩一

第1節 「聞き書き」とは何か
第2節 教育手法としての聞き書き 
 以上 19日

第3節 若者たちの課題とその解決策
第4節 新学習指導要領が私たちに問いかける問題
 以上 20日

第5節 「国語科」とは何か 
 以上 21日

第6節 PISA型学力
第7節 「温故知新」 教育改革と「聞き書き」
 以上 22日

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第6節 PISA型学力

PISA型の学力が問題になっている。また「問題解決型の教育」が言われるようになってからかなりの年数が経過した。これらに簡単に触れておく。

PISA型学力は、従来の詰め込み式への対論としては意味がある。「答え」を暗記させるのに対して、「答え」を考えさせ文章としてまとめることは、はるかに高い能力である。しかし、それはまだまだ低いものであることもわきまえておかなければならない。その低さとは、「問い」を出すのは依然として教師や大人であるということだ。

自立していく上で重要なのは、自分の問題意識、自分のテーマを作ることだ。その際の「問い」は自分が出すもので、他人から与えられるようなものではない。自分自身の「問い」だからこそ、本気でその「答え」を出す気になれるのだ。大切なことは「答え」を出すことではなく、自ら「問い」を出すことなのである。
「答え」を求めると、教師の用意した「答え」があることを暗示することになり、それを見つけさせるだけの指導になりやすい。むしろ、容易には「答え」がないような「問い」を投げかけるべきなのだ。それがディベートなどで優れた教師がやっていることだ。
そもそも現実の社会問題は、どれをとっても複雑に入り組んでおり、簡単に解答が見つけられるようなものではない。その複雑な込み入った状況の中で、答えが容易には出せないことに耐えて、ねばりづよく考え続けること。そのタフさこそ、教育すべきなのだ。

「問題解決型の教育」でも同じである。大人の場合とは違い、高校生にとって重要なことは「解決」ではない。解決すべき「問題」に気付き、その問題を定式化する(疑問文の形にして問題を明確にする)ところに核心がある。

そして、問題意識を作る上で、ねばりづよく現実に立ち向かっていくタフさを養成する上で、聞き書きがいかに有効かを本書は述べたいのだ。多くの高校生の問題は「答え」を出せないことではない。その答えが通り一遍のキレイごとであり、安易な決意表明になりやすいことだ。それを突き崩すことからすべては始まる。

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第7節 「温故知新」  教育改革と「聞き書き」

2014年12月に文部科学省の中央教育審議会が新たな答申「新しい時代にふさわしい高大接続の実現に向けた高等学校教育、大学教育、大学入学者選抜の一体的改革について」を発表した。これをめぐって高校現場が大騒ぎになっている。2020年度から大学入試ががらっと変わる。それと一体の形で高校現場の教育にも大きな変革が求められている。

答申は目標として次のような能力の獲得を掲げる。「十分な知識と技能を身に付け、十分な思考力・判断力・表現力を磨き、主体性を持って多様な人々と協働する」。これが「学力の三要素」と称されるナカミだ。
より具体的には、課題の発見と解決に向けた主体的・協働的な学習・指導方法である「アクティブ・ラーニング」の充実を図ることとしている。

これだけなら、従来の繰り返しでしかないと思うが、今回の違いは、その達成のために大学入試改革を断行することが明記されたことだ。これが現場に大きなインパクトを与えている。
これまでも高校段階の教育改革はさんざん提言されてきた。しかし大学入試がネックとなって改革が進まない。今回はその大学入試改革と一体の形で進んでいる。「本気だ!」と現場に伝わっているのだ。
2020年度から現在の大学入試センター試験が廃止され、「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」と「高等学校基礎学力テスト(仮称)」が導入される。
 また、各大学が個別に行う入学者選抜(個別選抜)でも、各大学がそれぞれの入学者受け入れ方針=アドミッション・ポリシーを策定することを義務づけ、それにしたがった選抜を求めた。

これら全体の改革を通して、答申が目標として掲げる「学力の三要素」の獲得が求められた。

しかし、これによって現場の先生方がまたまた混乱している。「学力の三要素」とは何か。「アクティブ・ラーニング」とは何か。これまでの教育、現行の学習指導要領が求める学力や指導法と何が違うのか。

「温故知新」。大切なことは表面的な言葉の違いにごまかされることなく、変わることのない教育の本質と、時代の変化の両面をしっかりと見極めることだ。

今回の答申で、従来の方向と大きな変化は何もない。求められていることはこれまでの延長上のことでしかない。本来の教育の目標を、さまざまに流行の言葉で言い換えているだけだ。
私はこの序章の四節以下で現行の学習指導要領の掲げる目標の意義とその目標達成のための課題を説明した。そのまさに延長上に、この答申がある。今回の答申の内容は、実は二〇年前の学力低下論争の際に議論されていたことであり、その際に議論されていた回答の遅すぎる実現なのである。そしてそれはさらには、「ゆとり教育」が課題にしていたことの、一周遅れの繰り返しでしかない。

だから、いつものように、私たちは教育の本質、教育の根本に、いま一度立ち返って考える必要がある。眼前の生徒や学生の課題こそ、私たちが解決しなければならない課題なのだ。彼らの抱える課題をどう解決できるか。それにどういう考えと方法で立ち向かえば良いのか。
本書全体がその回答になっていると思う。「学力の三要素」や「アクティブ・ラーニング」という言葉に振り回されるぐらいバカげたことはない。いつも変わらない本当の教育があり、その実行が求められているだけだ。
そして、本書の立場からは、今回の答申も、現行の学習指導要領がそうであるように、大いに追い風である。これを生かして、本来の教育活動に邁進していただきたいと思う。