日本教育新聞の連載コラムの2回目が、4月13日に掲載されました。
学校の「個性」とは何か、というタイトルで、大阪府教育委員会が中堅府立高校二一校と協働で行ったプロジェクトを取り上げました。
学校の「個性」とは何か
教育界では「個性化」「多様化」「特色化」が大流行だ。しかし、それが大きな混乱をもたらしている。本当の意味が理解されていないどころか、問題をごまかすために使用されたりする。例えば「高校生の多様化」「カリキュラムの多様化」とは、高校生の「低学力化」とそれへの対応のことだったりする。
「個性」の理解の浅薄さは、普通科高校、特にその中堅校で暴露される。進学校や教育困難校なら看板を出しやすいが、中堅校になるとお手上げだ。その中堅校の「特色作り」に取り組んで大きな成果をあげたのが、大阪府教育委員会が中堅府立高校二一校と協働で行ったプロジェクトだ。二〇〇五年から開始し、大阪教育大学(大脇康弘教授たち)も参画している。四年目の〇八年度には事例校を5校(刀根山、久米田、市岡、吹田東、布施高校)に絞り、校長とミドルリーダーの役割、学校革新の分析などを進めてきた。今年二月にはその報告と討議が行われ、私も参加した。
ここでは「特色作り」といっても、それぞれの学校の具体的な課題を明らかにし、その解決に取り組んできた。眼前の高校生たちの抱えた課題、それに全校で取り組むこと。学校の個性とはその結果生まれるものでしかない。それを行政、現場と研究者の三者が協力して実現しようとしている点がすばらしい。
私が一番感動したのは、学校教育の目的を「すべての高校生の『伸びしろ』を大きくすること」と、参加校の皆さんが口をそろえて発言していたことだ。一般に「改革」に成功した学校は「偏差値」があがり、「良い生徒」が集まる。しかし、その分は必ず、どこかの高校が下がることになる。私立ならばいざ知らず、公立校がそれでは意味がない。大阪ではこの矛盾の答えを出した。「入学した生徒が3年間でどれだけ伸びたか」で競い合う。
商人の街大阪の、現実的理想主義のすごみをまざまざと見た気がする。