日本教育新聞の連載コラムの3回目が、4月20日に掲載されました。
「高大接続テスト(仮称)」について書きました。
日本的な平等観と能力主義の再検討を
高大接続のための新たなテストが検討されている。すでに昨年11月から関係者が集まって協議を始めた。参加メンバーは国立大学協会や私立大学の諸団体、全国高等学校長協会、大学入試センター関係者ら22人の委員。文部科学省も支援している。
このテストの目的は高校生、大学生の学力低下への歯止めである。すでに10年近く前から大学生の学力低下が叫ばれ、高校生の「学力の底が抜け」てしまったと言われてきた。
高校では何十年も前から全入であり、高校生の基礎学力の低下が進行していた。少子化で大学全入時代を迎え、大学入試の簡易化が学力低下を一層助長している。その責任をめぐり、高校側と大学側とは、互いを非難し合ってきた。高校内部、大学内部でも私学と公立・国立などの対立がある。文科省内の小等中等教育局と高等教育局との縦割りの問題も大きい。
今回の新テスト導入でも、高校側からは「推薦入試やAO入試の定員を拡大しておいて、高校卒業時の学力に問題があるとは笑止」「卒業認定は校長の権限だ、別に基準はいらん!」。地方では「われわれの高校はどこもきちんとやっているし、統一テストで高校生を脅さないと学習意欲が喚起できない関東都市圏の公立高校とは違う」などと強い反発がある。そもそも大学入試やセンター試験に問題があるのだから、その改善から始めるべきだ。
しかし、今回すべての利害関係者が同じテーブルについたことは大きい。相互の疑問を率直に話し合って欲しいと思う。ただし注文がある。これまでは常に現状に追われ、その追認とその表面的な対応に終始してきた。そして本質論や根本理念の議論はほとんど行われなかった。本質論とは、戦後の日本的な平等観(いわゆる「悪平等」)と能力主義の在り方の問題である(詳しくは拙著『大学入試の戦後史』を参照されたい)。今度こそ、そうした議論を率直に行って欲しいと思う。当事者だからこそそれができるし、有効だと思うからだ。