今回の学習指導要領には画期的な点があります。
第1に、言語活動(思考、判断、表現)を教育活動の中核とし、すべての教科で指導すべき、とした点です。
第2に、その教育活動の中心に国語科が位置づけられたことです。
第3に、リアルな現実、生徒の体験が重視されたことです。
これは、これまでの学校教育、国語科教育の大きな課題の克服をうながすものです。
課題とは、学ぶ対象が リアルな現実ではなく、抽象的で一般的なきれいごとでしかないことです。つまり、現実の社会問題や、現実のクラス・学校・地域の問題が軽視され、生徒自身の体験、生き方が問われることが少ないことです。
また、それらを取り上げても、問題や陰の部分や本音に突っ込むことがなく、きれいごとや建て前に終始することです。
また、その学び方にも課題があります。それが情緒的・感覚的・文学的で、思考によって分析・判断することが極めて弱いことです。
それが今回、大きく変わることが期待されます。特に、国語科は、他教科の思考、表現を指導することを要請されたのです。変わらないわけにはいかないでしょう。
これまでの国語科は、思考力をなおざりにし、文学教育と道徳教育に成り下がっていました。それを改革し、理科や社会、英語や数学、家庭科などの教科での表現、分析、読解をリードすることが求められています。もともと、すべての表現とその根底の思考力を教えるのが国語科であるべきだったのです。
今のままの国語科が、理科や社会に適切な表現とは何かを教えられるでしょうか。こうしたことをめぐって、大きな混乱、議論が起こるでしょう。それは避けられない過程なのですが、その意味がわからないと、またバッシングを受けるでしょう。
全国の高校現場の心ある先生方、是非協力して、この課題の克服のために努力していきましょう。
昨日のブログで書いたように、新しい学習指導要領についての座談会に出ました。私見について、詳しくはそちらをご覧下さい。大修館書店のPR誌『国語教室』90号、本年11月に発行予定です。