5月 26
シリーズ:「聞き書き」を学び合う 第5回
高校作文教育研究会6月例会
高校作文教育研究会は、昨年秋から1年間ほどの予定で、会のテーマを「聞き書き」として、聞き書きの可能性、授業で実践する際の具体的手だて、その課題などを検討しています。
私たちの例会に、各地の中学、高校のすぐれた実践家10人ほどをお招きし、みなで共同討議をします。もちろん、生徒作品を丁寧に読みながら、具体的に考えましょう。
この成果は、本年6月から雑誌「月刊 国語教育」に1年の連載の形で発表されます。
みなさんの積極的な参加を希望します。
6月の例会では、兵庫県立高校の藤本さんの『聞かしてぇ?な仕事の話』などにまとめられた実践と、千葉の県立高校の川北さん総合学習「環境学」から始まった「総合的学習の時間」の実践報告です。共に、長期にわたって行ってきた実践で、すぐれた作品がたくさん生まれています。
藤本さんからは、その実践と理論から大いに学びたいと思います。また、川北さんの総合学習「環境学」からは、調べ学習あるいは野外調査活動と表現指導がどうかかわったらよいのかを考えたいと思います。
参加希望者は以下に簡単な自己紹介(所属、年齢、国語、表現での問題意識など)を添えて申し込みください。
メールアドレス sogo-m@mx5.nisiq.net
1 期 日 2009年6月21日(日)10:00?16:30
2 会 場 鶏鳴学園御茶ノ水校
東京都文京区湯島1?9?14 プチモンド御茶ノ水301号
? 03(3818)7405 JR御茶ノ水駅下車徒歩4分
3 報告の内容
(1)総合的な学習の時間と表現指導
前千葉県立小金高等学校 川北裕之(千葉県立市川工業高等学校)
千葉県立小金高校では、総合的な学習が導入される試行として、生物と政治経済の教員が中心になって総合学習「環境学」を立ち上げ大きな成果を上げました。後にそれを発展させ、修学旅行等の学校行事をベースに、生徒、保護者とともに「総合的な学習の時間」を作りました。
総合学習「環境学」では、 生徒は各自のテーマに従い、文献を調べ、フィールドワークを行い、取材し、レポートにまとめます。そして、学習終了後に「学びのストーリー」を文章にします。
いくつかの生徒のレポートの検討をしながら、発表、レポートの指導や評価、生徒の様子、成果、課題について、参加者とともに考えていきたい。
(2)『聞かしてぇ?な仕事の話』
兵庫県立川西高校 藤本英二(兵庫)
八七年から〇一年まで三校で六回、聞き書きの実践をし、それを『ことばさがしの旅』と『聞かしてぇ?な仕事の話』にまとめました。今回、生徒の作品と「聞き書きを終えて」という作文を紹介しながら、「対話の三極構造」「一人語りの文体(擬似直接話法)の意味」など、理論的な問題にも触れたいと思います。
4 参加費 1,500円(会員無料)
4月 13
小学校、中学校、高校、大学の先生方、塾・予備校の先生方に、鶏鳴学園のノウハウを公開します。また、悩み相談にも応じます。
?授業見学
?研修(個々の課題に応じて、カリキュラムを作ります)
?悩み相談
小中での次期学習指導要領の改訂の柱は「思考力・判断力・表現力等の育成」「言語活動の充実」です。すべての教科で「観察・実験やレポートの作成、論述」の指導が求められるようになります。そして「これらの学習活動の基盤となるものは、数式などを含む広い意味での言語であり、その中心となるのは国語である」とされました(以上、中教審答申より)。
高校の学習指導要領の改訂でも、「思考力・判断力・表現力」は柱の一つです。
こうした中で、「思考力・判断力・表現力」をどう指導したらよいのかわからないで途方に暮れている先生方は多いと思います。国語科はもちろんのこと、英語や数学、理科や社会などすべての教科でその指導が問われます。学校全体で、「思考力・判断力・表現力」の教育をどのように編成したらよいか、悩まれている校長、教頭、教務主任の先生方も多いことでしょう。
また、大学の初年次教育や基礎教育でも「思考力・判断力・表現力」の基礎トレーニング、調査、取材のトレーニングを課す大学が増えてきています。そんな中で、新たな教育実践に挑戦しようという先生方を支援したいと思います。
鶏鳴学園では、4半世紀に渡り、まさにこの「思考力・判断力・表現力」の養成を主眼に置いた指導を行い、成果を上げてきました。全国的な学習会も組織して、英語や数学、理科や社会、保健体育などすべての教科の先生方とも学び合ってきました。中学から高校、大学までの教員と研究者がメンバーに揃っています。学校だけではなく、塾・予備校の先生方もメンバーです。そうした中で多くのノウハウが蓄積されています。是非みなさまにも、鶏鳴学園のノウハウを生かしていただきたいと思います。
鶏鳴学園のノウハウを知っていただくには、代表の中井浩一の著書『日本語論理トレーニング』(講談社現代新書)と『脱マニュアル小論文』(大修館書店)をお読みいただくのが早いと思います。しかし、そうしたノウハウを知るだけではダメで、先生方ご自身が練習や実際の指導の中でその運用能力を身につけていかなければ、生徒や学生の指導はなかなか難しいものです。
お悩みやお困りの際には、是非一度、鶏鳴学園まで問い合わせをしてください。
ただし、その際には簡単な自己紹介をお送りください。
それには年齢、連絡先、所属、指導上での悩みや問題意識、『日本語論理トレーニング』『脱マニュアル小論文』などをお読みの方はその感想などをご記入ください。
連絡は以下にお願いします。
e-mail:
sogo-m@mx5.nisiq.net
4月 09
高校作文教育研究会は、昨年秋から1年間ほどの予定で、会のテーマを「聞き書き」として、聞き書きの可能性、授業で実践する際の具体的手だて、その課題などを検討しています。
私たちの例会に、各地の中学、高校のすぐれた実践家10人ほどをお招きし、みなで共同討議をします。もちろん、生徒作品を丁寧に読みながら、具体的に考えましょう。
この成果は、本年6月から雑誌「月刊 国語教育」に1年の連載の形で発表されることが決まりました。
みなさんの積極的な参加を希望します。
4月の例会では、東京の私学から正則高校と海城学園中学(社会科)の実践を検討します。共に、長期にわたって行ってきた実践で、すぐれた作品がたくさん生まれています。
聞き書きの指導では、どのような準備と指導過程を必要とするのか。そこではどのような能力を獲得できるのか。またその課題は何か。生徒たちの成長を実際の作品に照らし合わせて検討したいと思います。
参加希望者は以下に簡単な自己紹介(所属、年齢、国語、表現での問題意識など)を添えて申し込みください。
メールアドレス ko-nakai@js6.so-net.ne.jp
1 期 日 2009年4月26日(日)10:00?16:30
2 会 場 鶏鳴学園御茶ノ水校
東京都文京区湯島1?9?14 プチモンド御茶ノ水301号
? 03(3818)7405 JR御茶ノ水駅下車徒歩4分
※鶏鳴学園の地図はhttp://www.keimei-kokugo.net/をご覧ください
3 報告の内容
(1)「学習旅行」で試みた「聞き書き」の取り組み
東京 正則高校 宮尾美徳
毎年二年生の三月に行う「学習旅行」で、今回は各クラスにICレコーダーを持たせ、現地のお話すべてを録音して持ち帰った。そして、それをクラス一同で文字に起こす「事後学習」を進めた。
この試みは生徒の認識をどれだけ深めることが出来たのか、検討したい。
(2)海城高等学校における「総合社会」の目的と現在
?取材・フィールドワークで自らの研究課題に取り組んで?
東京 海城学園 林 敬
併設の中学で3年間、週2時間の授業を通じて、生徒個々が関心のある社会問題に対して文献調査、取材、フィールドワークを通じてレポートを書かせてきた。
こうした学習によって、中学生がどのように成長し、社会や自己への認識を深めることができたかを検討したい。
4 参加費 1,500円(会員無料)
3月 19
高校作文教育研究会の2月の例会は、2月15日(日)に行われた。
この研究会は、私が代表を務めている全国的な研究会だ。
報告の内容は以下の3本
(1) ハンセン病患者への聞き取り調査
愛知県 日本福祉大学付属高校 今田 和弘
文化祭でハンセン病を取り上げ、高校生と一緒に聞き取り調査を開始。しかし、文化祭学級企画では1年限り。そこに「総合」学習の導入があり、継続的に高校の授業で、聞き取り調査を通じてハンセン病を追い続けてみた。
本校でスタートさせた「地域とむすぶ総合的な学習の時間」で、FWを含むハンセン病と人権講座を行った。聞き取り調査を通じて「テープ起こし」をする力の意味を再発見!「レポートつくり」や「レジュメを作っての発表」。そして、地域での「ハンセン病パネル展示会」などを通して、高校生の力と総合のもつ可能性を発見した報告です。
(2)「短い論文」における「経験の一般化」の指導
?中井メソッドの指導理念と方法論にのつとって?
茨城キリスト教学園高校 程塚 英雄
中井メソッドによる「短い論文」や「小論文」は、「経験」の部分とそれを「一般化」した部分に分かれ「一般化」した部分は「問い」、「分析」と「答え」で構成される。しかし、「経験」から 「一般」への飛翔は、『脱マニュアル小論文』も指摘するように、「多くの高校生にはムズカシイ」(P171)。この報告では、今年本校の三年生が書いた「短い論文」を数編読んでいただき、どうすればその壁を乗り場えさせられるか、皆さんと一緒に考えてみたい。
(3)「経験文を書く」―大学での実践例―
聖心女子大学 准教授(フランス中世史) 印出 忠夫
中井浩一著『脱マニュアル小論文』で提唱された作文指導法を、大学一年生対象の半期の教養演習「経験文を通して自分を知る」の場で実践した経験を報告します。大学生といってもまだ新入生ということもあり、高校生の場合と比べてなにほどか新味のある結果をお話できるかどうかは良く分かりません。報告者は作文の指導経験が皆無なので、この機会にさまざまなご意見をいただければ嬉しく思います。
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(1)は、「聞き書き」シリーズの一環。
これには、以下の事情がある。
高校作文教育研究会は、昨年秋から1年間ほど、会のテーマを「聞き書き」として、聞き書きの可能性、授業で実践する際の具体的手だて、その課題などを検討しています。
私たちの例会に、毎回各地の中学、高校のすぐれた実践家10人ほどをお招きし、みなで共同討議をします。もちろん、生徒作品を丁寧に読みながら、具体的に考えます。
この成果は、研究会として本に出版する予定です。そのために、まずは今年の6月頃から雑誌「月刊 国語教育」に1年の連載をすることが決まりました。アンカーは古宇田栄子さんです。
さて、今回の「ハンセン病患者への聞き取り調査」の報告は、実は3年前にも例会でしてもらい、共同討議をしている。今回は、その後の実践を踏まえての再報告であり、再検討だった。
この調査は高1の文化祭の試みとして始まったが、その後総合学習として組織されて毎年全国の「ハンセン病患者」への聞き取り調査を行っている。
学校のある愛知県は、県からハンセン病患者を一掃した県だ。保護者の中には、子どもを調査に行かせない人も出てくる。その学校の地元から追放された患者たちと、高校生は出会う。そして、何人かは、その事実と思いを、帰ってから自分の家族と話す。それは彼らを変えていく。高1で引っ込み思案だった女子は、家族と話し合う。この経験で大きく成長して、生徒会長を引き受けるまでになった。
初回の高校生も大学進学し、すでに社会人になっている。衝撃的な聞き取り調査が、一人一人のその後の人生にどういった影響を与えたか、それを考えるだけの時間がすぎた。今回は、そこまで踏まえた議論ができて良かった。
前回私が評価した二人は、その後、大学生になっても、この聞き書きに参加し、後輩たちのめんどうを見ていたという。一人は社会福祉関係、一人はトヨタに就職した。
わたしが評価しなかった女子高生たちは、卒業後も高校に遊びに来て、聞き取り調査で出会った患者さんを懐かしがると言う。
参加者のある年輩者からは「電車に乗っていると、老人にひょいと席を譲ってくれる気のいい茶髪の女子高生がいるが、彼女たちの文章がこうしたもんだ」「思ったこと、感じたことを、何の考えもナシに書いてしまう」。そうした文章も、またそうした「気のいい」彼らの自己表現として、的確に評価されることが必要だとの指摘だ。
こうした指摘から、さまざまな高校生たちの文章の読み方を学んでいける。
(2)の程塚英雄さんの報告は、極めて重要な問題提起だ。
それは、高校生が論文を書く目的は何か、経験を一般化することにどういう意味があるのか、という問題だ。高校生の日常と普遍世界をどうつなげばよいのか、という指導方法に関する問題でもある。「経験」から「一般」への飛翔は、いかにしたら可能なのか。この問いに、すべての教師は自分の答えを用意しなければならないはずだ。
(3)は大学の初年次教育、基礎教育の在り方を考える上で重要だ。
繰り返し試みて、練り上げていって欲しいと思う。
2月 06
昨年2008年11月15日に、九州大学の1年生を相手に、大学でのレポートの書き方について講演をしました。ハウツーをお話しする気は最初から無く、大学の先生との関わり方が大切だとお話ししました。
学生からは、先生のレポートの評価基準が分からない、レポートに何を求めているのかわからない、と言った不満の声が多かったのです。もちろん、大学の先生がダメなのですが、学生のできることは、先生たちに評価の基準の公表を求め、実際の評価例などを、授業で解説するように求めるべきだとお話ししました。不満を持っているだけで、行動をしなければ何も変わりません。
学生がまともなレポートを書けない、といった不満は大学の先生たちの間に多いですが、その先生方は本当にやるべきことをやっているのかが、大いに疑わしいです。
レポート提出を求める前の段階で、学生一人一人が、「書きたくてたまらない」「伝えたくてたまらない」「書かずにはいられない」、そうした状況までにしているのでしょうか。
通り一遍の授業をして、レポートを書かせるだけなら、そんな先生はいりません。先生の学生に対する評価は、そのまま、先生自身への評価だと自覚すべきです。