11月 06

高校作文教育研究会10月例会が30日に行われました。

しばらくは、全国の実践家との交流をはかりたいと思っております。

表現指導には、実にさまざまな取り組み方があります。また、高校には多様な学校があり、多様な生徒たちが学んでいます。そうした多様な実態と、その中から生まれている多様な実践、多様な生徒作品。それらと向き合いながら、表現の可能性を広く、深く、考えてみたいと思います。

10月は以下の3つの報告がありました。

報告の内容

(1)ことばで人と人をつなぐ実践 ?俳句・短歌を中心に?
東京 都立保谷高校 菊池 陽子

  現任校の前に勤務した3校(17年間)は夜間定時制をはじめとしたいわゆる底辺校・困難校だった。そうした環境の中で生徒も我々教員もプライドをなかなか持てずにいるという実情だった。
 ところが、そうした中でも良い生徒たちと出会え、彼ら、彼女らの表現力の豊かさに学ぶところが多々あった。その時期にしかないみずみずしい表現に心打たれることもしばしばであった。

 そこで、「前向きに生きようとする生徒の心の叫びを伝えたい。学力では勝ち目のない他校生と同じ土俵で戦わせたい」と、外部コンクール入選を目標に掲げ、様々な取り組みを工夫した。
 「表現に偏差値は関係ない」そう確信するに至った実践の一端を、短歌や俳句を中心に、ご紹介したい。

(2)魔法の言葉で、家族に自らの思いを伝えよう!?小説の学習から、家族との手紙文の往還へ
              山形県立山形工業高等学校 安孫子 哲郎

 今年の三月十一日、東日本は未曾有の大地震に見舞われた。瞬時のうちに津波で流された、2万人の尊い命。さらに、原発問題、風評被害等。大地震の後遺症は、今もまだ暗い影を投げ続けているのだ。こんな時だからこそ、家族のありかたを見つめ直し、家族の絆を深めることが必要なのではないだろうか。

 高校二年の一学期後半、家族とのつながりを描いた、重松清の小説「卒業ホームラン」を学習後、その読書感想文を家族に宛てた手紙文の形でまとめ、家族からの返信をもらう取り組みを実施した。その結果を報告したい。

(3)貧困に向き合う
鹿児島県 神村学園高等部看護科非常勤講師 中俣 勝義

 最近、中学校国語科の教材として岩波文庫の『銀の匙』を3年間で読み上げ、灘高校を東大合格者のトップに押し上げたという橋本武の『奇跡の教室』を読んだ。そこには徹底した「横道(授業が脱線し、話題が他へそれること)の教育」が貫かれていた。私はそれを読みながら、ああ、私のやっていることもこういうことだったのだと意を強くしたものである。

 私の実践は、小林多喜二の『蟹工船』を30時間かけて読み解くというもので、横道でいえば、学生たちが書いたふたコマごとの講義感想を読み合い深める、『蟹工船』の労働者の姿と現代社会のさまざまな問題と重ね合わせる、というささやかなものである。だが、そこから学生たちの苦痛に満ちた『蟹工船』の姿が浮き彫りにされてくる。

 今回はそのなかの貧困ゆえに「体を売る」という問題を取り上げたい。なお、事前に拙著『風のらーふる』を読んでいただけるとありがたいです。

11月 05

村山士郎氏(日本作文の会常任委員会副委員長)の特別講演会

◆◆東日本大震災のため延期しておりました村山士郎氏(日本作文の会常任委員会副委員長)の特別講演会を12月11日に実施します。◆◆

村山 士郎 先生 特別講演会
?「聞き書きの魅力と指導法」連載終了記念? 
高校作文教育研究会12月例会

演 題  事実をとらえることの豊かさとおもしろさ 
      ― 生活綴方実践から大学教育実践まで ―

高校作文教育研究会は、1998年2月に会を設立して以来、13年になります。この機会に、私たちの実践と研究をまとめようということになり、最も自信があった聞き書きについて取り上げることになりました。聞き書きは、高校生にとって学ぶものがほんとうにたくさんあると実感していたからです。

そこで2年間ほど、研究会のテーマを「聞き書き」として、私たちの例会に全国の中学、高校、大学のすぐれた実践家17人をお招きし、聞き書きの可能性、授業で実践する際の具体的手だて、その課題などを検討してきました。

その成果は、「聞き書きの魅力と指導法」と題して『月刊国語教育』(東京法令出版 2009年7月号?2011年3月号)に連載してきました。

約2年間、21回続いたこの連載の終了を記念して、村山士郎氏の特別講演会を開催します。

私たちの共同研究の成果をふまえて、さらに深めるための特別学習会です。
どうぞ、ふるってご参加ください。

村山氏からのメッセージ
 貴研究会で京都の八ヶ峰中学の実践に注目し、そこから「聞き書き」の今日的可能性を引き出そうとしていること興味深い視点だと思っています。80年代に私が注目した時には、学校ぐるみの平和教育としては注目されていましたが、私がもっとも大切だと思っていた表現の発達論的視点からの着目は希薄であったと記憶しています。
 生活綴方実践や私の仕事である大学教育実践において、今日、「事実をとらえること」の多面的な試みが不可欠になっています。言い換えると子どもや学生を「事実に向きあわせること」が学習主体に育てていくということです。ここに学びの原点があると思っています。その方法の一つに「聞き書き」が位置付くのかと思っています。
 私の教育学研究では、この間、「事件のなかの子どもたち」をテーマにして論文や本を書いてきましたが、その研究方法の前提には「事実と向きあう」、「事実を聞き取っていく」ことを大切にしてきました。しかし、八ヶ峰中学の生徒のようには表現出来ないもどかしさを抱えてきました。
 学習会では、上のようなことを、まとまりなく話してみたいと思っています。

村山士郎氏のプロフィール
1944年 山形県に生まれる
1977年 東京大学大学院教育学研究科博士課程修了
現在    教育学博士、大東文化大学教授
      日本作文の会常任委員会副委員長
主な著書  『生活綴方実践論』(青木書店、1985年)
      『平和を語る学校』(編著、労働旬報社、1986年)
      『子どもの攻撃性にひそむメッセージ』(柏書房、1999年)
      『なぜ「よい子」が暴発するか』(大月書店、2000年)
      『事件に走った少女たち』(新日本新書、2005年)
      『現代の子どもと生活綴方実践』(新読書社、2007年) ほか多数

1 期 日    2011年12月11日(日)13:00?16:30

2 会 場   鶏鳴学園御茶ノ水校
         東京都文京区湯島1?9?14  プチモンド御茶ノ水301号
         ? 03(3818)7405 JR御茶ノ水駅下車徒歩4分
       ※鶏鳴学園の地図はhttp://www.keimei-kokugo.net/をご覧ください
3 内容

(1) 特別講演 村山士郎「事実をとらえることの豊かさとおもしろさ 
              ― 生活綴方実践から大学教育実践まで ―」

(2)  報告
共同研究を終えて                茨城 古宇田栄子

約2年間、共同研究の成果を、「聞き書きの魅力と指導法」と題して、『月刊国語教育』に連載してきました。連載を始めてすぐに、題名を「聞き書きの魅力と指導法」ではなく「聞き書きの魅力と可能性」とすべきであったと気付きました。それほど聞き書きの世界は、未知と可能性に満ちていました。共同研究では17人の実践とその生徒作品を検討しました。今回は、連載の終了を記念して、共同研究の概要、論点、そこで出会った実践家たちの珠玉の言葉等を紹介したいと思います。

 参加費   1,000円(会員無料)

11月 04

震災後の国立大学の対応の取材

10月17日から19日は仙台の東北大と宮城県歯科医師会を取材しました。
東北大では医学部、歯学部、病院。地域イノベーション研究センター。

10月21日から23日は盛岡の岩手大学を取材しました。
岩手大ではINS(産・官・学の連携組織)、地域連携推進センター、本部。23日の震災復興への取り組みの報告会を取材。

成果は、雑誌や本で発表する予定です。

10月 16

10月11日から14日まで、福島県の、被災時の状況、復興への取り組みを取材しました。

高校現場、県教育委員会、福島大学を取材しました。

成果は、雑誌や本で発表する予定です。

10月 15

今後のゼミの日程が変更されました。

秋の読書会のテーマとテキストの一部が決まりました。

どうぞおいでください。

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◇◆ 1.今後のゼミの日程 ◆◇

今後の日程は以下です。

 10月29日(土曜日) 読書会

 11月12日(土曜日)  文ゼミ
    26日(土曜日)  読書会

 12月10日(土曜日)  文ゼミ
    22日(木曜日)  読書会

 12月末(28日以降)に成績発表と忘年会を予定

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◇◆ 2.読書会のテーマとテキスト ◆◇

(1)読書会のテーマ

読書会のテーマを、東日本大震災で提起された問題とします。

(2)テキスト

1.10月29日は(土曜日)

医療現場から見た震災の姿です。
医療とは何か、人間が生きるとはどういうことか、
そうした根源的な問いと答えが、ここにあります。

海堂 尊 (監修)『救命―東日本大震災、医師たちの奮闘』新潮社 (2011/08)

2.11月26日(土曜日)

福島県の原発問題を考えます。
福島県は、宮城県、岩手県と比較して、震災後の復興がきわめて困難で、その心の傷は一層深いものがあります。
それは、原発事故による放射能汚染がすすんでしまったことから生じています。
そこから見えてきた問題を考えます。

福島になぜ、東京電力(自分たちの東北電力ではない)の原発がこれだけ集中したのか。
それを地方行政、地方財政の視点から解き明かしている清水氏の本と
実際に福島県の知事として、東電、国(経済産業省)と闘った佐藤前知事の告発本を
読みます。

その1
清水 修二 (著)『原発になお地域の未来を託せるか―福島原発事故 利益誘導システムの破綻と地域再生への道』自治体研究社

その2
佐藤栄佐久 著 『福島原発の真実』 (平凡社新書)

12月は未定です。