9月 17

◇◆ 3.人と話したい 金沢誠 ◆◇

 2年ぶりに合宿に参加した。参加してよかったと今回は思った。

 自分は人と話をすることに対して、強い抵抗がある。
ささいな言葉を交わすことでさえも、うそ臭いなと感じて、
斜に構えてしまう。自分だけの世界に閉じこもってしまう。

 このようなひきこもり状態を10年近く続けてきた。
その間は、何かおかしいと思いながらも、何だかよく分からない
苦しい状態だった。自分に対して、他人に対して、
うまく折り合いをつけることができなかった。人と関わる、
人と話をするなどということは、仕方なしにやるしかないものだ
というようにしか思えなかった。これをなんとかしたいということが、
自分が鶏鳴学園に通うようになった理由の一つにある。

 通い始めて、報告会に参加して、最初の頃は、
その場にいるだけでも苦しかった。
まして自分のことを話す時になると、もういいから自分の番が
早く終わってくれと思っていた。自分の姿を自分で見る時には、
不快でたまらない気持ちになる。

 今もそれがなくなったわけではないが、ようやく最近になって
変わりつつあるように思う。今回、合宿に参加して、そう思った。
特に話し合いの場に参加しながら、人と話をするっていいものだなと思った。

 ただ、自分の課題も見えた。ゼミのなかで、中井さんが、発言の少ない
参加者に対して、「話し合いの場で発言をしないのは犯罪行為だ」と
指摘したのを聞いていて、自分自身のことを考えた。
次はもう少し発言できるようになりたい。
そのために毎月の報告の場で、少しずつ努力していきたい。

9月 16

◇◆ 2.ヘーゲルと縁のない人 太田峻文 ◆◇

 私は今年の7月から中井さんの下で「本気の勉強」をする事を
目的の一つとして師弟契約を結び、ドイツ語の学習、
ヘーゲルの原書講読を始めた。

 合宿においてなによりも驚かされたことは、原書講読における
中井さんの学ぶ姿勢である。ゼミの形式はゼミ生が一文ずつ原文を読み、
和訳をした後に、中井さんがその文に考察を加えていくというものであるが、
理解が不十分な所に対しては立ち止まり、一つの冠詞、一つの指示語から
全体の構成まで立ち戻り、さらなる考察を深めていく。

 この時間が退屈に思われるかも知れないが、中井さんはその考察を
一つ一つ言葉に発しながら行なっていくので、私たちもその考察過程を
たどることができるのである。

 このように、中井さんはヘーゲルの言わんとすることを、
なんとかつかもうと極限まで突き詰めた後、その時点で
どこまでの理解に達し、また、どこが理解できないのかという
理解の到達点までも私たちに説明する。
この対象への誠実さにもまた圧倒された。

 ヘーゲルの文章が難解であるのはもちろんだが、中井さんは
ヘーゲルが難解である以前に、読み手自身がそういう生き方を
していなければ分からない、つまりヘーゲルと縁のない人は
分かりようがないと何度か指摘する場面があった。

 その証拠に、今回の合宿では中井さん自身の経験を、
たくさん聞く事が出来た。その一方で、自分はどうだったかと振り返ると、
概念論では、男女のかかわり合いやフリーター・ニートの問題を
特殊の段階に見て考えることによって、そして自分を特殊の段階として
意識して読む事によって少しは読めた気がするし、自己理解も
深まったように感じる。

 特に、自己理解という事で言えば、合宿後半の精神現象学は印象的だった。
今回読んだ第三部の第二節は、「自分が世界の始まり」という
個人の意識の始まりから、自己実現の最終段階についてであった。

 その意識の始まりから、個人が他者と一体になったり、
社会に反発したりという意識の変遷では、強烈に自分の経験を
意識する事ができた。他人との比較が、どれほど表面的なものであるかと
指摘するヘーゲルを読んでいる時、他人との比較でしか自分を
感じられなかった過去の自分を思い出した。特に高校時代から
大学3年までの自分を、今まで以上に相対化するきっかけを
今回の合宿では得ることができた。

 そして、以上の低い意識の段階から抜け出す為に、
ヘーゲルは行動することの重要性を強調する。
まさか自分がヘーゲルで自己啓発されるとは思っていなかったが、
他との比較は無意味だということをさんざん経験してきた今だからこそ、
「行動していく中で自分の何たるかが明らかになっていく」という
ヘーゲルの発展の立場にたった考え方のすごさ、強さを
実感することができた。

 先に進まない限り何も見えてこないというのは当たり前の話に思えるが、
実感を持って納得できたのは今回が初めてだった。それも自分が
鶏鳴でこの一年間、今までの生き方を少しでも反省し、その上で
自分の課題に取り組もうとしてきたからではないか。
自分は、ヘーゲルと縁のない人では無いと言う事が、今回の合宿で
分かっただけでも行ってよかったと思う。

9月 15

今年の夏を、読者のみなさんはどうすごされましたか。
 自分の課題へのとりくみは進みましたか。

 大学生・社会人のゼミでは、この夏も八ヶ岳で3泊4日の合宿を行いました。
 もう4年目になります。

 ヘーゲル哲学の学習のメニューは、
 原書購読は、大論理学「概念論」の概念の普遍と特殊の範囲、
 翻訳では、ヘーゲルの『精神現象学』(牧野紀之訳)の
 5章・理性論の後半(2節、3節)の範囲を読みました。

 2日目と3日目の晩には「報告会」を行い、
 ゼミ全体と各自の課題について話し合いました。

 4日間の参加者は3人。大学生が1人、社会人が2人。
 3日間の参加者が社会人1人。
 他に報告会だけの参加が2人(1人はウェブで参加)。

 その参加者の中から4人の感想を掲載します。

 吉木くんは、3月に大学を卒業し、1年間はヘーゲル哲学の学習を中心に、
 テーマ作りと就職活動が課題になっています。昨年夏から3回連続の合宿参加。

 太田くんは大学4年で、すでに就職を決めています。
 残り半年あまりの学生生活で、ヘーゲル哲学の学習をし、
 テーマ(ラジオというメディア)を深めることが課題です。
 合宿は今回が初参加。

 金沢君は、福島県のロッジでの仕事を終わりにして、次のステップを
 めざしているところです。ロッジでは、最初3カ月、その後1年1カ月間働きました。
 それまでは引きこもりに近い生活を長くしていましたから、
 この1年で、大きく成長したと思います。
 合宿には2年前の夏に参加して以来の2回目の参加です。

 小堀さんは、過去の精神的に追いつめられた経験から立ち直り、
 自分を作り直すことが課題だと思います。昨年の夏に続いての参加ですが、
 今回は「報告会」だけのウェブ会議での参加でした。

 他に、50代の女性と、40代の政治家志望の男性が参加しました。

 ■ 目次 ■
 1.ヘーゲルの中に自分を見る 吉木政人
 2.ヘーゲルと縁のない人 太田峻文 
 3.人と話したい 金沢誠 
 4.「何もしない時間」を考える 小堀陽子

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◇◆ 1.ヘーゲルの中に自分を見る 吉木政人 ◆◇
 
 合宿は去年の夏から参加している。3回目の参加にして初めて、
合宿を行うことの意味が分かってきた。

 合宿では4日間もヘーゲルを読み、報告会をし、休憩時間もそれらの話を
続ける生活をした(疲れます!)。それによって、ヘーゲルを読むことと、
自分の生活、生き方をより深く結び付けて考えることが出来たと思う。

 1つの物事を突き詰めることによって没落(「没落」は良い意味であるらしい)が
始まる、という内容のヘーゲルの言葉があった。その時には、自分が親について
悩んでいた経験を思い、悩みをつきつめる(文章に書いたりした)ことによって、
親の人生ではなく自分の人生を頑張ることの覚悟ができたことを考えたのだった。

 報告会では就職活動等の報告をし、行動するということの意味を
自覚し始めていたところだった。そんな中、精神現象学でヘーゲルが
行動の意味について書いていることに驚かされた。行動することによって、
明らかになるのは自分自身であり、さらには自分の背後にある歴史
(両親や人類の歴史、地球の歴史)であるというようなことだった。
ヘーゲルを読むことによって、行動しなければ何も始まらないということを
さらに強く自覚できた。

 今回、ヘーゲルと自分の経験との相互作用が生れてきたのは、
私自身が一応成長しているということだと思った。ヘーゲルが何を書こうと、
自分に引き付ける経験が無ければ、ヘーゲルを読んでもどうにもならないと思う。

 合宿について他に付け加えるとすれば、大きかったのは中井さんから
「お金」の話が出たことだった。「お金」のことから逃げずに、
真正面から考えるべきだということだった。

 お金をどうやって得て、何に使っているか、お金に対してどういう態度を
取るのかといったことには、その人間の生き方や人間関係などが表れると思った。
しかし、大事なことにも関わらず、「お金」の話となると、自分は
逃げていることを痛感した。というよりも自分の生き方が前面に出てしまうからこそ、
恐れて逃げているのだと思う。そういったことに気付けたことは良かったが、
そこからは自分次第である。

9月 13

9月6日から9日まで、福島県、宮城県の被災地を取材しました。
私の取材は、主に「教育」という観点からの取材ですので、学校、教育委員会、大学などが取材先です。福島では中小企業家同友会もたずねました。

7月にも、1週間ほど福島、宮城、岩手県をまわっていて、今回はそれに続く取材です。
10月にも、追加取材する予定です。

8月 24

9月以降のゼミの日程が決まりました。

初めての参加者には、事前に「自己紹介文」を書いていただいています。

 1. 簡単な履歴(年齢、大学・学部、仕事など)
 2. 何を学びたいのか
 3. どのようにこの学習会を知ったのか、なぜこの学習会で学びたいのか
 
などを書いて、ゼミの2週間前までに以下にお送り下さい。
E-mail:
  sogo-m@mx5.nisiq.net
 2回目以降の参加希望者は、1週間前(文ゼミの初回参加者は2週間前)までに連絡をしてください。

ゼミ参加費は、すべて1回3千円です。

(1) 読書会、文章ゼミ(文ゼミ)

読書会、文章ゼミ(文ゼミ)は、いずれも原則は午後5時開始
その後、午後7時より「報告会」があります。

9月10日 報告会(午後7時より)。文ゼミはありません。
24日 文ゼミ

10月8日 文ゼミ
22日 読書会

11月5日 文ゼミ
19日 読書会

12月3日 文ゼミ
12月17日 読書会

12月末に成績発表と忘年会を予定

(2)毎週月曜日のヘーゲル原書講読と関口存男著『定冠詞論』の読書会

 9月19日から開始します。

1.ヘーゲル原書講読

 毎週月曜日午後5時から行います。
 『大論理学』「主観性」の「概念」の「個別」を読みます。
ヘーゲル哲学の核心中の核心です。

2.日本語文献を読む時間

 毎週月曜日午後7時から行います。
 関口存男氏の『定冠詞論』の後半を読みます。
 世界的なドイツ語学は、言語とは何か、人間とは何かを解き明かします。