7月 04

昨年の秋に、マルクスの労働過程論(『資本論』の第3篇第5章第1節)を
丁寧に読んで、労働価値説と唯物史観について考えてみました。

 今回考えたことをまとめ(「マルクスの労働過程論 ノート」)、
その考え方の根拠となる原文の読解とその批判(「マルクス「労働過程」論の訳注」)
を掲載します。

 ■ 全体の目次 ■

 1.マルクスの労働過程論 ノート
  A 全体への批判
  B 構成
  C 本来の構成(代案)

 2.マルクス「労働過程」論(『資本論』第1部第3篇第5章 第一節)の訳注                           
 
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■ 本日の目次 ■
1.マルクスの労働過程論 ノート(その1)
 A 全体への批判

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1.マルクスの労働過程論 ノート
                    2013年10月22日 中井浩一

  A 全体への批判

 (1)唯物史観の導出ができていない

     マルクスが『資本論』のここに労働過程論を入れたのは、
    労働価値説の証明と、唯物史観の導出のためである。

    ところが、2つともにできていない。

     唯物史観の導出ができていない点については、
    道具(労働手段)が生産力と関係することを言うだけで、
    生産関係や上部構造がどこから出てくるのか、
    またこの3者の関係はどうなっているのかを示せない。

     これは唯物史観を主張するマルクスにとって
    致命的な欠落だったのではないか。

     それは冒頭で、一般的な労働過程論を展開するとしたことで、
    避けられなくなった。資本主義社会といった特定の社会段階から
    切り離した、共通部分として書くと言う。
    抽象的悟性の立場、外的反省の立場に立ってしまった。
    しかし、資本主義社会から切り離して論ずることは実際にはできない。
    そこで、資本主義社会のことが、無原則に労働過程の本質論に入り込む。

     当初は「人間」論のはずが、2段落以降で「労働者」が主語に
    なってしまう。「資本家」は労働していないかのような仮象を
    与えている。

     人間は労働によって、自分たちの都合のよいように、この世界を
    変えてきた。しかし、同時に、自分自身をも変えてきた。
 
    思考、目的にあった労働形態を作るために、
    つまり生産力を高めるために、道具などの生産手段を生みだし、
    それにふさわしいように自分自身の能力(肉体的にも精神的=思考にも)
    を高め、さらには人間の生産関係を変えてきた。

    この点を言えなかったのは、唯物史観の創始者にとって致命的だった。

     ある思想の創始者には、創始者としての責任がある。
    この資本論の労働過程論は、人間の本質を明らかにし、
    唯物史観の意味を鮮明に描き出すべきところだった。
    それがまるでできていない。

 (2)「実体」への反省が不十分

    (1)の結果に終わったのは、「実体」への反省が不十分だからだ。
    構成上は、次の B「構成」で示す「(3)生産物の立場からの、
    労働過程の検討」の中で、結果論的な考察(Nachdenken)、つまり
    「実体」への反省がなされなければならなかった。

     そして、人間の使命、自然が人類を生んだ意味を導出する
    べきだった。
    人間はなぜ労働をするのか。自然と人間はどういう関係なのか。
    自然の概念、人間の概念、労働の概念とは何か。
    そうしたすべてが明らかにされないままに終わっている。

     つまり本来の結果論的な考察(Nachdenken)になっていない。
    そこで、許万元が『ヘーゲルの現実性と概念的把握の論理』で
    マルクスの代わりにそれを実行した。
    しかし許は、マルクスの批判は行わない。

 (3)マルクスのこの文章ならびにその構成はかなりひどい。
    点数をつければ30点ほど。

 100点満点でのもの。
    以前はマルクス大先生の文章は常に80?90点ほどだと
    買いかぶっていたが、今回はそのひどさに愕然とした。

     この文章の目的、ねらいは何か。
    そのために、何をどういう順番に書くべきなのか。
 
    それを十分に考えて、全体の構成を練り上げてから
    執筆するべきだった。
    ところが、マルクスはそれが不十分なままに、出たとこ勝負で、
    行き当たりばったりで執筆しているように思う。

     本来の目的を見失い、本当に書くべきことが書かれていない。
    これでマイナス30点。
    全体の構成の練り上げが不十分で、必然的な構成ではなく、
    行き当たりばったりの個所が多い。これでマイナス30点。
    また、傍流が多く読みにくい。これでマイナス10点。

    以上の結果、総合評価は30点である。

 
 (4)この(1)から(3)の問題点について、いまだ誰も批判を
    していない

    せいぜい牧野紀之の批判的な言及があるだけだ。

6月 10

6月、7月の読書会テキストが決まりました。

ゼミの参加希望者は早めに(読書会は1週間前まで、文章ゼミは2週間前まで)連絡ください。ただし、参加には条件があります。

参加費は1回3000円です。ただし文章ゼミは1回2000円。

(1)2014年6月以降のゼミの日程

6月21日 読書会と「現実と闘う時間」

7月5日 文ゼミと「現実と闘う時間」
7月19日日 読書会と「現実と闘う時間」

8月21日?24日まで合宿

(2)読書会テキストについて
?6月の読書会
マルクスの『経済学批判』(岩波文庫)から
「経済学批判序説」(特に「3.経済学の方法」)
第1章「商品」と「A 商品の分析のための史的考察」57?73ページ

「経済学批判序説」(特に「3.経済学の方法」)はすでに昨年に読んでいます。
しかし昨年秋からアダム・スミスの『国富論』を通読し、
マルクス『剰余価値学説史』からアダム・スミス論 第3章と第4章を読みました。
それを踏まえて、再度、マルクスの『経済学批判』の該当箇所を(岩波文庫)を読んで検討したいと思います。

?7月の読書会
ヘーゲルの『法の哲学』(中公クラシックス版。私は『世界の名著』版で読みます)
の第1部を読みます。

『法の哲学』は近代社会の原理原則を、ヘーゲルがその根底から明らかにしたものだと思います。
私たちはすでに10年前から、部分、部分を読んできました。その第3部は7年前に夏の合宿で読みました。
そして今、家族と市民社会と国家を問うヘーゲルを再読したいと考えます。
今、一方では家族が崩壊し、他方では国家主義が台頭しているように思うからです。

7月には第1部、8月の合宿で第2部、第3部を通読したいと思います。

5月 15

魂を鎮静する絵 バルテュス展の薦め

バルテュス展が開催されている。

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バルテュス展 Balthus: A Retrospective
東京都美術館
2014年4月19日(土)から6月22日(日)

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あまり期待しないで行ってみた。
ところが、すばらしかった。圧倒された。

彼の絵は少女が描かれることが多く、それを「ロリータ・コンプレックス」などと精神分析的な説明をする人たちがいる。
私はこうした手合いが大嫌いで、バルテュスには興味が持てないでいた。
しかし、そうしたチャラチャラした説明は、この絵とは無縁だと感じた。

ここにあるのは世界の本質に迫ろうとする意志と力だ。
それは何よりも、絵の構図とマチエール(画面の肌合い)によって実現されている。
当然セザンヌの影響があるのだろうが、私にはレンブラント、そして牛島憲之が思われた。

静謐、しかし圧倒的な力。

私の魂が鎮められていくのがわかった。深く深く内省へといざなわれる。そこに私の魂があり、私の本質があることがわかる。いつしか、それと向き合っているのがわかる。

5月 14

高校作文教育研究会6月例会

表現指導には、実にさまざまな取り組み方があります。また、高校には多様な学校があり、多様な生徒たちが学んでいます。そうした多様な実態と、その中から生まれている多様な実践、多様な生徒作品。それらと向き合いながら、表現の可能性を広く、深く、考えてみたいと思います。

2月は3つの報告を予定しています。1つめは福島県の矢澤郁代さんの報告。農林高校の森林環境科の生徒が「聞き書き甲子園」に参加した経緯や成果を生徒2人自身も参加して語ってもらいます。
2つめは神奈川県の冨田明さんの報告。3年生全員に夏に志望理由書書かせました。学年全体での取り組みの報告です。
3つめは東京の正則高校の宮尾美徳さんの報告。高3生の読解と表現をつなが、そこから進路指導に取り組んだ実践の報告です。

みなさんの実践に参考になるヒントがたくさんあると思います。どうぞ、みなさん、おいでください。

参加希望者は、鶏鳴学園まで事前に連絡をください。

1 期 日    2014年6月8日(日)10:00?16:30

2 会 場   鶏鳴学園
〒113?0034  東京都文京区湯島1?3?6 Uビル7F        
 電話 03(3818)7405
 FAX 03(3818)7958
 メール keimei@zg8.so-net.ne.jp 
ホームページ http://www.keimei-kokugo.net/
       ※鶏鳴学園の地図はホームページをご覧ください

3 報告の内容

(1) 「聞き書き甲子園」に参加して  
福島県立会津農林高等学校 矢澤郁代

 本校赴任3年目となりました。赴任1年目、1年生対象に保護者に対する聞き書き「働くということ」を課しました。聞き書き、そしてクラス全体での読み合わせを通し、働くということ、親子関係について考えを深めるよい機会となりました。
2年目となった昨年、新1年生には同様の取り組みを行い、新2年生には自分が興味を持っている職業に就いている社会人に対する聞き書き「働くということ」を課しました。
それと同時に、森林環境科(本校は農業園芸科、森林環境科、食品加工科の3科からなる)の生徒たちに対して「聞き書き甲子園」(きこりや造林手、炭焼き、漁師や海女、船大工など、森や海、川に関わる分野で様々な経験や技術を先人たちから受け継いでいる名手、名人を訪ね、知恵や技術、人生そのものを聞き書きし、記録する活動)への参加を呼びかけたところ、4名の生徒が希望し、2名の生徒が参加しました。
今回の発表では、その2人の生徒が「聞き書き甲子園」に参加しようと考えた理由から、レポートをまとめ上げるまでの過程、そして内面の変化を報告いたします。

(2) 3年夏に志望理由書をつくる―学年全体での取り組み
神奈川県立上溝南高校・冨田明

 1年と2年夏に聞き書き作文を書いた学年。受験を前にした3年夏に全員に宿題を出しました。?部が志望するきっかけとなった経験、?部が問題を追究して本を読んだり聞き書きをしたりして調査した内容、?部が考察という内容。2学期は選抜した文集を読みあわせして、批評を書きました。
正則高校の宮尾実践に刺激を受けての取り組みです。何人かの作品を読みながら、検討していただけたらと思います。     

(3) 高3生の読解と表現、そして進路指導
東京 正則高校 宮尾美徳

高3の一年間にわたって、現代国語と国語表現、合わせて週四時間の中で書き綴った、一人の生徒の作文をたどりながら、読解の授業、そして表現の授業の様子を紹介し、その進め方について考え方を語る。また、並行して行った進路指導についても触れたい。
そして、それらの方法について、ご検討いただけたらと思う。

4 参加費   1,500円(会員無料)

5月 08

毎週月曜日のゼミを、しばらくお休みにしていましたが、5月12日から再開します。

参加希望者は早めに(1週間前まで、ただし全く初めての参加者は2週間前まで)連絡ください。
ただし、参加には条件があります。

参加費は1回3000円です。

午後5時からは関口存男著『定冠詞』を読みます。
冒頭から読んでいきます。すでに昨年に読み終えていますが、
今年の1月に『無冠詞』を読み終えて、新たな観点を持てたので、
再度、『定冠詞』を読み直します。

午後7時からはヘーゲルの大論理学・目的論の後半(ズールカンプ社版全集第6巻、445ページから)
を読みます。毎回2、3ページほどを読みます。

5月12日の後は、
19日は実施、
26日はお休みしますが、
6月2日、9日、16日と続けます。